2013年5月号 [Vol.24 No.2] 通巻第270号 201305_270006

オフィス活動紹介—地球温暖化観測推進事務局(OCCCO)— 地球温暖化観測に関する専門的事項を検討するワーキンググループの活動について

1. 背景

地球温暖化観測に関わる府省や研究機関、大学等が連携して、統合された地球温暖化観測システムの構築に向けた取り組みを行うために、地球観測連携拠点(温暖化分野)(以下、連携拠点)[1]が平成18年に設立されました。地球温暖化観測推進事務局(以下、事務局)は、連携拠点の活動支援を目的として、環境省ならびに気象庁によって設立され、国立環境研究所の地球環境研究センターを活動拠点としています。事務局では、地球温暖化観測に関する専門的な事項を検討するために、専門家によるワーキンググループ(以下、WG)を設置し、会合の運営や報告の取りまとめ等を行っています。今回は、そのWGの活動について紹介します。

2. 地球温暖化観測推進WG

平成18年度から21年度に設置された「地球温暖化観測推進WG」では、さまざまな分野における観測の現状とニーズを取りまとめ、2冊のWG報告書[2]を刊行しました。その中で取り上げられた、観測データの標準化および流通の促進、という重要な課題に取り組むために、現在では以下二つのWG[3]​が設置されています。

3. 温室効果ガス(Greenhouse Gases: GHG)観測データ標準化WG

このWGは、GHGの濃度を測る際のスケール(物差し)となる標準ガスについて、その濃度の精度を高め、GHG観測データの標準化と流通の促進を図ることを目的として設置されています(地球環境研究センターニュース2011年6月号参照)。国際的には、世界気象機関(World Meteorological Organization: WMO)の主導により、各国の主要なGHGの観測機関間で標準ガスを巡回させ、基準の統一を図るためのラウンドロビンという比較実験が行われており、日本からは気象庁が参加しています。一方、このWGでは、国内でGHGの濃度を測定している主要な機関、また、国際単位系にトレーサブルな標準ガスの開発を行っている(計量)標準機関との間で、より広範囲の濃度の標準ガスについて、各機関が保有するスケールの相互比較を行う計画を立てました。この比較実験は、iceGGO​(InterComparison Experiments for Greenhouse Gases Observation)​と名付けられ、平成24年度に開始されました。平成24年度には、気象庁、気象庁気象研究所、東北大学、国立極地研究所、産業技術総合研究所、国立環境研究所の関係者により、メタンおよび二酸化炭素の標準ガスの比較実験が行われました。iceGGOは、標準機関の産業技術総合研究所の参加により、国内で初めての観測機関と標準機関間の標準ガスの比較実験となりました。今回の実験から明らかとなった、標準機関の計測標準値と各スケールの関係性や、同位体の測定値に及ぼす効果などの課題に取り組むため、今後もiceGGOを実施し、検討を進めていく予定です。

4. 放射観測機器の較正に関するWG

太陽放射観測はさまざまなところで行われており、また、観測や研究の目的によって、多様な観測機器が利用されています。観測機器の精度を保つためには、全天日射計については検定制度を、直達日射計および日照計については委託検定制度を利用することができますが、それ以外の、分光放射計や光量子計等の放射観測機器については、検定制度や一般的な較正方法がないのが現状です。このWGでは、まずは国内のどのようなところで、どのような放射観測が行われているか、また、放射観測機器に関し、どのような問題点を抱えているかを把握するために、放射観測機器を利用して気象観測、農業気象観測、生態学分野の観測を行っている機関を対象にアンケート調査を行いました。さらに、平成24年11月には、「太陽放射エネルギーの観測と利用」と題した連携拠点主催のワークショップ[4]​を開催し、総合討論等も踏まえ、太陽放射エネルギーの観測と利用における、連携に関する課題や取り組みを取りまとめました。地球温暖化分野の観測にとって、太陽放射エネルギーを正確に測定することはとても重要です。アンケート調査の結果やワークショップの取りまとめを基に、放射観測機器の課題や較正方法の統一に向けた取り組みについて、今後もWGで話し合う予定です。

脚注

  1. 地球観測連携拠点組織図 http://occco.nies.go.jp/renkei/about.html
  2. WG報告書参照先 http://occco.nies.go.jp/pub.html
  3. WGメンバー参照先 http://occco.nies.go.jp/renkei/about.html
  4. 平成24年度の連携拠点ワークショップ http://occco.nies.go.jp/121115ws/index.html

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