CGER探検隊による研究紹介「噂の研究現場」

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何か妖怪!?の島で起こっていること東アジア大気汚染の変遷問題

本当の観測場所?

サンプリング地点は2つあるそうです。ひとつは西郷港にある隠岐保健所合同庁舎屋上なのですが、もう一つは中村・布施地区にある国設隠岐酸性雨離島局内にあります。まずは車で移動です。

途中にある玉若酢神社の境内に、由緒ある天然記念物八百杉(やおすぎ)というものがあります。昔数百年生きながらえたといわれる八百比丘尼が若狭から隠岐に渡り、記念にここに植えたとされ、杉の根元に大蛇が生息していたが、寝たまま杉の根に包まれてしまって、今でもそのいびきが静かな時に聞こえるとされています。

向井さん

隠岐島に来始めたころに、途中の道路の端と真ん中に1本ずつ松の木があって、二本松と言われていたものがありました。道路を広げた時に、この真ん中松を切らずに、そこを迂回するように道にしたものでしょうが、なんだか風情があって好きだったんですがね。隠岐島の松は、それこそ松くい虫による松枯れによって、たくさんやられてしまったんですね。最初は山の方の松が枯れてるなあと思っていたんですが、この有名な松も枯れてしまったそうです。今は、その後継の松を植えているらしいです。

みどり

酸性雨とかの影響でしょうか?

向井さん

それもあるのかもしれませんが、なかなか、原因を探るのは単純じゃないと思います。松は、あまりたくさんの栄養があると、健康を害するとか聞きます。雨の中には、窒素などの栄養素が増えてきていると言われます。そういったことも、関係があるのかもしれませんが……

隠岐の国設酸性雨離島局は福浦の先の灯台のある保健保安林の中にあります。ずいぶんと北に来ましたね。そして林のなかにずんずんわけいっていきます。観光地ではない為、人の出入りは少なそうですね。空気もきれいです〜! この施設では向井さん達の観測ばかりではなく酸性雨、大気汚染物資などを測る他の機関の機器も設置されているようです。現場には、保健所の方がメンテナンスに来てらっしゃいました。

みどり

この海の向こうから、なんだか流れて来るかしら。

向井さん

このまわりも、松林だったんですが、すっかり枯れて、今は周りが見渡せるように視界が広がっています。

隠岐保健所の昌子さんと高見さん達

向井さん

じゃあ、ちょっと、ここでも、フィルター交換をしましょう。ここでは、採取装置が二つあります。ひとつは、石英繊維のフィルターがついていて、有機物などを測定するためのものです。もう一つは、まあプラスチックの素材のフィルターでこちらは金属成分を測ります。

向井さん

新しいフィルターは、白いでしょう。ひと月採取していると、これぐらいの灰色になります。これは、大気中に漂っている割と小さな大気粉じんで、硫酸イオンなどを多く含んでいます。黄砂が来ると、カルシウムが高くなるんです。黄砂には石灰岩の成分が結構入っていますのでね。季節や年によって、この色や中の成分が異なるんです。これの変遷を、調べたいのです。汚さないように手袋で扱って、アルミホイルに包みます。

遅野井さん

みどりさん、流量を読んでもらえますか? そこのデジタルの流量計で。

みどり

今、20.3LMってなっています。

遅野井さん

20.3リッター毎分という意味で、1分間に20L程度で、ひと月引いたら、フィルター交換をやってるんです。ときどき停電がありますが、通電時間が記録される仕組みになっています。

みどり

普段は、どうやって交換してるんですか?

向井さん

そうなんです。普段は保健所の方に交換をお願いしています。私が始めてからおそろしく長くお願いしてきたんです。これまで、たくさんの歴代の保健所のかたにお世話になって、みなさんに本当に感謝しています。お世話になりました。

向井さん

それからこの装置、これで2代目なんですが、非常に簡単な装置で、前の1代目で20年近くも同じ装置で大気を採取して来たんですね。今じゃ、そんなローテクの装置でのんびりやっていたら、やっていけないかもしれませんが、まあ、細く長くやるコツかもしれません。

向井さん

ここの観測局は、酸性雨や大気汚染物質や放射線なんかも測定してるんです。アメリカの学生さんがひと月ほど来ていて、窒素酸化物の観測をしたということもありましたよ。この場所は、結構由緒ある観測局で国の観測所の中でも重要視されているんです。島根県の衛生公害研究所(現:保健環境研究所)の方々にもいろいろお世話になったんです。

向井さん

でも実はね、最初にこの装置を設置したのは、ここではないんです。

みどり

えー! というか、どういうことでしょうか、今頃、そういわれても。