CGERリポート

マテリアルフローデータブック
~日本を取りまく世界の資源のフロー~

Material Flow Data Book-World Resource Flows around Japan-
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概要- 158p -

日本をはじめとする先進工業国は、大量の資源を自然環境から採取し、加工して様々な物質を大量に生み出し、これを消費することによって便利で豊かな生活を享受している。一方、生産・消費段階で生じる汚染物質や、消費された物質は廃棄物として自然環境に戻されている。こうした自然環境と人間活動の間での物質循環の規模は、自然環境が持つ資源の再生能力や廃棄物の浄化能力を大きく超えている。すなわち今日の多くの環境問題は、大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会経済活動のあり方そのものへと結びついていると見ることができる。

資源の利用可能量や環境の自浄能力が有限であることの認識は、持続可能な発展を論じる上での基本認識の一つであろう。アジェンダ21の第4章においても、こうした現在の先進工業国の生産と消費の形態が、持続不可能なものであることを指摘している。わが国の環境基本計画においても、生産と消費のパターンを持続可能なものに変えていくことが必要であること、物質的な豊かさのみの追求が環境の危機を招いているとの認識が深まっていることに言及している。

こうした大量の物質に特徴付けられた今日の経済社会と環境問題の関わりを分析する上では、自然環境と経済活動の間、およびさまざまな経済主体間の物質やエネルギーのフローを体系的に把握することが不可欠である。こうした目的には、マテリアルフロー勘定あるいはマテリアルフロー分析と言われる手段が有効である。国立環境研究所においては、1991年から地球環境研究総合推進費の総合化研究と呼ばれる分野において、環境資源勘定に関する研究に取り組んできた。とくに、大量の資源を輸入に頼る日本にとっては、地球規模の問題を環境資源勘定に反映させることが重要課題であり、本データブックで取り上げる自然資源の貿易データはその過程で整備してきたものである。

一方、米国・ドイツ・オランダ・オーストリアなどの諸外国においても、マテリアルフロー勘定に対する取り組みがおこなわれつつあり、国際的な研究協力も進んでいる。これらの国々との共同研究の最初の成果として1997年に“Resource Flows”が、第2の成果として2000年に“The Weight of Nations”を発表した。(http://www.wri.org/wri/data/matflows/, http://www.wri.org/materials/weightofnations.html

この国際共同研究の最大の特徴は、従来のマテリアルフローの把握から漏れていた、「隠れたフロー」(ドイツの研究者達は元来、「エコロジカル・リュサック」と名づけていた)、つまり採取された資源量は、実際に経済活動に投入された量をはるかに上回る、という点に着目したところにある。国際的な比較においても、日本への輸入量の絶対量を考えれば、「隠れたフロー」における日本の占める役割は大きい事がわかる。

本データブックは、このような背景を踏まえたうえで、資源の貿易という側面から世界の中における日本の占める位置を再認識し、資源に関連する環境問題を考える上での参考資料として活用されることを狙ったものである。データブックとしての中心部分には、国連貿易統計から抽出、集計した主要自然資源についての貿易データを必要に応じ様々な形で収録している。これらの情報を明快に理解するための手助けとして、世界の地域ブロック間における主要自然資源フロー図には、資源のカテゴリー別にカラー図を多く盛り込んでいる。さらに作成に用いた貿易マトリックスにおける数値データも別途添付している。

本データブックは、国際貿易という側面から地球規模の問題を学ぶ、第1歩を示すことを意図している。消費者の立場からみた「揺りかごから墓場まで」(ライフサイクル)における、製品や企業活動を環境面から評価する際の参考にもなり、また、地球環境経済モデルなどの調査研究の基礎データとしても活用いただきたい。

第2版が平成15年3月に発行になりました。