2015年9月号 [Vol.26 No.6] 通巻第298号 201509_298007

観測現場発季節のたより 7 夏場にしか訪問できない観測現場

  • 地球環境研究センター 交流推進係

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国立環境研究所の国内観測現場の中で夏の短い期間しか行けない場所が1つだけあります。それは富士山の頂上、すなわち日本で一番高いところにある富士山特別地域気象観測所(通称:富士山測候所)です(写真1)。地球環境研究センターニュース2014年9月号でこの施設の紹介をしましたが、今回は施設の内部を一部紹介します。

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写真1富士山測候所1号庁舎の外観。現在の測候所の建物は昭和39年〜48年にかけて建設されました

測候所の小さな入り口(写真2)に比べて中は広く、4つのブロック(庁舎)に分かれ、3階建ての構造になっています。越冬観測可能なように設計されていて、寝室はもとより、食堂、シャワー等も整備されて長期観測が可能な環境が整っています。現在は、無人化した気象庁の気象観測のほか、様々な大学・研究機関が富士山頂の大気の質を詳細に観測しています。国立環境研究所は山頂の二酸化炭素濃度を継続的に観測しています(写真3)。

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写真2測候所の入り口

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写真3国立環境研究所の観測機器のある3号庁舎1階の様子。標準ガスを充てんしたボンベの周辺にバッテリー・観測機器・パソコン等が設置されています

測候所は山開きにあわせて7–8月のみ人が常駐していますが、それ以外は無人となり、アクセスできなくなります。火災防止等のため、施設への送電も止まってしまうので、国立環境研究所の観測機器は100個の寒冷地仕様バッテリー(南極昭和基地で使用実績があるもの)で稼働させます。それぞれの観測機材には電力切り替えが確実に行われるように準備がされています(写真4)。

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写真4観測機材には越冬の際の電源スイッチ切り替えの方法が明記されています

観測は自動で通年行われていますが、観測機器に出会えるのは盛夏2カ月間だけ。地上は猛暑でも、研究者にとって貴重で勝負の季節なのです。写真1〜4は本年8月18日に撮影したものです。この日、山頂までの間で、外気は時折10°Cを下回り、天気も変わりやすく、地上とは全然違う空気を感じました。ふもとの御殿場市の同じ時間の気温は24°C、富士市は27°Cでした。実際、富士山の頂上は、日本において最も地上の影響を受けていない大気を調査できる場所なのです。ここでの継続的な観測はバックグランド濃度を知るうえで非常に貴重であると言えます。

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