2020年4月号 [Vol.31 No.1] 通巻第352号 202004_352007

【最近の研究成果】 2030年に向けてEVを屋根上PVと組み合わせて蓄電池として使用した際の家庭の経済性と脱炭素化に関して

  • 地球環境研究センター 気候変動リスク評価研究室 特別研究員 小端拓郎

人為起源のCO2排出に伴い大気中のCO2濃度が上昇し、異常気象がますます頻繁に起こり始めています。将来の気候変動を最小限にするためには、最も経済的な手法で、大規模に脱炭素化を行っていく必要があります。本研究では、2030年に向けて価格が安くなることが予想されている太陽光発電(PV)、蓄電池、電気自動車(EV)を、家庭に導入した際、どのような経済的メリットおよび脱炭素化をもたらすか試算を行いました(図)。日本では、都市部やその郊外で車の稼働率が低いため、車が家に止まっている際、PVの蓄電池として使用できます。試算においては、プロジェクト期間10年、割引率3%(将来の価値を現在の価値へ換算する際に用いる年率)を用いました。その結果、2018年の時点で、すべての技術において経済性がほとんどなかったのが、2030年にはすべての技術において既存の電気とガソリン消費のコストより安くなることがわかりました。また、どの技術でも導入後にベースよりCO2排出が少なくなります。特に、通勤などに自動車を使用しない家庭がEVを蓄電池として用いることでエネルギー支出とCO2排出の大幅な削減となることが明らかになりました(図)。この結果から、今後、交通の脱炭素化に向けたEV普及政策を行う際には、PVと組み合わせたPV + EVのシステムとして普及を目指すことで経済性の高い脱炭素化に繋がります。

本研究は、総合地球環境学研究所の実践プロジェクト・予備研究「次の千年の基盤となる都市エネルギーシステムを構築するためのトランジッション戦略・協働実践研究」(代表:小端拓郎)の一環として行われました。

 京都の家庭におけるPV、蓄電池、EVを導入した際の経済性とCO2排出量。本研究プロジェクトは、京都市と協働で行っているため京都の日照・気温データを用いて試算を行いました。家庭は、戸建てで、年間消費電力は4,670kWh(2015年京都市内1世帯当たりの平均)、車は年間走行距離1万キロを想定。(上)正味現在価値(NPV)は、プラスの時、初期費用も含めて技術を導入した方がしないより節約になることを示す。(下)ベース(赤)のCO2排出量は、電力会社から電気とガソリンを使った際の排出量。青:太陽光発電(PV)、オレンジ:PV+EV、灰色:PV+蓄電池、黄色:EV充電のみ、赤色:ベース。

本研究の論文情報

Techno-economic assessment of photovoltaics plus electric vehicles towards household-sector decarbonization in Kyoto and Shenzhen by the year 2030
著者: Kobashi, T., Say, K., Wang, J., Yarime, M., Wang, D., Yoshida, T. & Yamagata, Y.
掲載誌: Journal of Cleaner Production, 253, 119933. https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0959652619348036?via%3Dihub

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