インドネシアにおける植林の事業性評価調査
(実施者:住友林業株式会社)
平成11~12年度にかけて「インドネシア東カリマンタン州における植林事業調査」が実施されました。本調査の目的は、インドネシア東カリマンタン州における植林事業の可能性とCDM事業としての可能性についての調査し、事業性を評価することです。
現地のカウンターパートは、東カリマンタン州に約30万haの産業植林地を有し、植林・管理・品種改良等に実績のあるSumalindo Lestari Jaya社です。
(1)対象地域
植林対象地は、インドネシア共和国東カリマンタン州にあります。東カリマンタン州の面積はインドネシア全体の11%に相当する21万km2であり、人口は約246万人です。森林面積は2,114万haにのぼり、産業植林面積が151万haを占めています。植林対象地は、草地よりも伐採後の二次林が多くなっています。早くから森林開発が行われており、木材加工業が盛んな地域です。

(2)平成11年度調査の概要
平成11年度調査は、次の5点を目的として実施されました。
- 植林に関連するインドネシア国及びカリマンタン州の事情を調査すること
- 短・中・長伐期樹種を組み合わせた合板・製材用材目的の植林によるCO2固定量の推定方法を確立すること
- 植栽から伐期までの森林管理の方法と事業性の検討により、事業継続上の問題点を抽出すること
- 立木のCO2固定量と製品の炭素貯蔵量を最大にする造林樹種の選定及び育種の可能性について調査すること
- 植林木の材質・用途別に歩留り調査を行うこと
これらの調査結果を踏まえて、東カリマンタンにおける短・中・長伐期の樹種を組み合わせた現実的かつ持続生産が可能な植林事業の事業計画と炭素固定量、及びそれがCDM事業にどのように関連するかという経営指標を試算し、提示しました。
(3)平成12年度調査の概要
平成11年度の成果をもとに、国際的に認知されるCDM植林プロジェクトの提案を行うため、以下の調査が実施されました。
- 二次林の現存量及び成長量の実測を通じた、より精度の高いベースラインの策定。
- 植林事業が地域住民に及ぼす経済・社会的影響の調査、及びリーケージなどの間接影響の評価。
- 病虫害、火災といった主要なリスクの実態調査、及びそれらが東カリマンタンにおけるCDM植林事業に与える影響の評価。同時にリスクの防除方法についての提案。
- 植林事業の条件を検討した上での事業計画の立案。この際、CDM事業におけるアカウンティング方式の違いによる炭素固定収入の算定方法、及び金額、計上時期についてシミュレーションを行い、インドネシアにおける植林事業をCDM事業として評価。
(4)平成12年度調査の成果
- ベースライン:以下の3つをベースラインとして想定することが可能であるとされています。
【ベースライン1】プロジェクトが無い場合の二次林の炭素蓄積は26tC/haで一定。
【ベースライン2】ベースライン1に森林火災によるリスクを含める。8年に一度の森林火災に被災し、その度に二次林の炭素蓄積はゼロになると想定する。
【ベースライン3】今回のSei Mao(スブル地区にあるSumalindo Hutani Jaya社の植林サイト)における調査に基づいて、推定した年間炭素固定量をベースラインとする。
- 間接影響:植林事業に伴う雇用の創出、インフラ整備等の経済効果など、植林事業区に隣接あるいは内包される村では、ある程度の経済発展が見込まれます。事業の間接影響としては、産業構造の変化、人口の増加、経済格差の増大が示唆されています。経済的影響はプロジェクトのリーケージにも深く関与すると思われるものの、本調査では定量的に評価する方法を提示するには至っていません。また、事業に伴う地域住民の土地利用変化については、社会林業地の増大が確認されています。耕作地の制限に伴う土地利用変化は、調査では確認されませんでした。
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