日本の取り組み
CDM植林プロジェクトの事業性評価調査
日本の民間海外植林事業を推進するための国際フォーラム
環境省地球環境研究総合推進費関連の吸収源プロジェクトの成果
その他の動き
CDM植林プロジェクトの事業性評価調査
温暖化対策クリーン開発メカニズム事業調査
環境庁では、平成11年度より、CDM/JIの対象と考えられる事業の実現可能性を検討・評価するフィージビリティ調査に着手し、地方公共団体やNGO等、応募の中から採用された団体が主体となって、現地調査(途上国等)、プロジェクト実施計画の立案及びその支援、プロジェクト実現に係る可能性の評価などを実施しています。ここでは、これらの中から主要な吸収源プロジェクトの概要を紹介します。
・インドネシアにおける植林の事業性評価調査(住友林業)
・炭化を組み入れた持続的生産可能なCO2固定植林事業の可能性調査(関西総合環境センター)
日本の民間海外植林事業を推進するための国際フォーラム
2001年2月1日~2月2日、「日本の民間海外植林協力を推進するための国際フォーラム-COP6以降を見据えて-」が開催されました(主催:財団法人国際緑化推進センター)。 この国際フォーラムでは、2000年11月にオランダ・ハーグで開催されたCOP6における京都メカニズムの議論について、国内外の関係者の間での理解・認識を共通なものとし、今後の日本の民間植林協力を推進するための意見交換・討論が行われました。 インドネシア、タイ、ベトナム、ミャンマーからは森林行政関係者が出席し、各国の状況について講演を行いました。 (1)インドネシア (a)森林の現状 1997年半ばに始まった経済危機が林業部門にも影響を与え、森林がパーム油のプランテーションへと転換されました。その際、合計970万haの森林(山岳地帯の森林480万ha、低地の森林320万ha、湿地・泥炭地の森林150万ha)が焼き払われました。特にカリマンタンでは650万haが燃やされ、そのうち240万haが低地の森林でした。この森林破壊は、木材業界への原料供給とも関係があるとされています。輸出用に加工される丸太の需要は森林の持続可能な供給能力の2倍以上となっており、この需給のギャップは違法伐採によってまかなわれています。世界銀行のデータによれば、年間の伐採面積は63万~200万haに上ります。 林業省の計画担当部局であるBadan Planologiのデータによれば、生産林4,120万haのうち1,170万haが破壊されており、保安林及び保護区でも違法伐採が行われています。林業省の正式統計では、1985年の森林面積は約1億1,970万ha、1997年は9,900万haとなっています。 (b)課題 林業省は、上述の現状を踏まえ、今後必要な行動として以下を挙げています。
- 森林の回復
- 木材業界の規模の適正化
- 植林地からの小径材の利用
- 荒廃地の再生・産業植林地の創出に向けた高品質の種子の安定供給
- 生態系の保全
- 残存している生産林、保護地区、保安林の保全
(c)主な取組 上記に挙げた課題の克服を目指し、現在インドネシアは様々な国際機関及びドナーと協力してプログラムを行っています。
- Shorea leprosula及びLophopetalum multinerviumの自然生育地外での保護
特定の種の遺伝子源を確保することを目的としたプロジェクトであり、小規模な植林の実施も行っています。国際熱帯木材機関(International Tropical Timber Organization: ITTO)の資金援助によって実施されています。
- Betung-Kerihun国立公園(インドネシア)及びLanjak Entimau野生生物保護区(サラワク)の国境を越えた保全・管理
同様の取組が、Kayan-Metarang国立公園とマレーシア・サバのカウンターパートとの間でも実施されることになっています。
- Bulunganにおけるモデル森林の開発プロジェクト
国際林業研究センター(Center for International Forestry Research: CIFOR)が行っているプロジェクトであり、コミュニティーの参加による保全・管理を含めた森林経営能力の強化を目的としています。このプロジェクトは、ITTOの資金援助も受けています。
- バリにおけるマングローブ林の再生
過去にJICAの出資によって行われたプロジェクトですが、マングローブ林再生のモデルと見なされ、延長に向けて評価を受けています。
- 森林火災の防止と探知(detection)
JICA、EU、ITTO、GTZ、US-AID等の支援を得て実施されています。また、幾つかの国内機関も林業省を支援しています。
- 森林経営と炭素固定に関する研究
植林による二酸化炭素吸収の実証を目的として、研究開発庁とJICAの協力によって実施されています。
- 国営会社による植林
国営会社(PT INHUTANI)によって既に15,000haに渡ってMeranti(Shorea属の総称)の植林が実施されています。
(2)ミャンマー (1)現状 ミャンマーは天然林の資源が豊富であり、国土面積676,577km2のうち498,621km2が森林に覆われています。森林面積の内訳は、閉鎖林293,269km2、劣化した森林50,963km2です。森林劣化の主な原因として移動耕作が挙げられ、移動耕作の影響を受けている森林は154,389km2に及んでいます。 保存林(Reserved forests)、保護された公共林(Protected Public Forests)及び保護区システム(Protected Area System: PAS)は法律によって永久森林エステート(Permanent Forest Estate: PFE)と定義されています。PFEは現在、国土の約21%を占めていますが、1995年に発表されたミャンマー国林業政策では、国土面積の35%をPFEとして維持することが定められています。 (b)課題 現存している天然林の効果的な保全が、課題となっています。 (c)取組
- 天然林の保全
ミャンマー森林局は1856年以降、天然林について持続可能な経営を行っており、Myanmar Selection System(MSS)というシステムが主要な森林管理システムとして採用されています。MSSのもとでは成熟した樹木のみを30年に1回の割合で伐採します。年間の収穫量は、成長量にもとづいて調整され、伐採は規制されています。また、保護区システム(PAS)というシステムが促進されていて、現在は153万haに及んでいますが、近い将来には2倍の規模に拡大されます。PASでの伐採は完全に禁止されています。伐採による炭素排出や環境への影響を低減するため、集材手段として象が利用されています。
- 再植林計画
劣化した森林地帯の再生、荒廃地の回復、及び天然林からの木材収量を補完するために、1960年代より再植林が行われています。国全体の植林目標は約44,500haであり、2001年には、森林局30,352ha、乾燥地緑化局が14,164haの植林目標を掲げています。乾燥地域の環境再生のための植林には、JIFPRO、OISCA、読売新聞、韓国のKOICAなどが協力しています。2000年末までに、全国で75万haもの植林が行われています。
(3)タイ (a)現状 王室森林局(Royal Forest Department: RFD)は、タイ国の森林資源に責任を有する唯一の政府機関であり、森林資源の保全と管理を使命としています。 過去40年間の国家経済・社会の発展によってタイの森林資源は開発され、森林破壊や林地の転用によって、森林が急速に失われました。しかし、その後は、現存する森林区域の保護に力が入れられると同時に、森林の回復や再植林活動が進められています。 (2)取組
- 国王在位50周年記念森林回復Throneプロジェクト
1993年に開始されたこの大規模なプロジェクトは、荒廃した森林の回復を通じて80万haの「永久林(permanent forest)」を創設することを目的としています。民間部門との協力のもと、2001年までに、既に40万haの「永久林」が造林されています。この「永久林」区域は、主として最も重要な流域である国の北部に位置しています。
- 流域回復活動
また、RFDは年間作業計画の中で、流域回復活動も行っています。これは国の重要な流域を安定化・回復させることを目的としており、二酸化炭素緩和のための主要な吸収源ともなっています。
- 産業植林促進プロジェクト
このプロジェクトは1992年にRFDを通じて政府によって開始されました。プロジェクトに参加する農家に対して補助金を提供することによって耕地を森林プランテーションへ多様化させることを目的としており、現在までに37.6万haの森林プランテーションを創出しています。
2000年にGISを用いた森林面積アセスメントが行われ、森林面積が1995年の153,952km2から171,825km2へ増加していることが確認されました。 (4)ベトナム (a)取組 ベトナム政府は1990年より植林計画を進めています。1993~1998年が第1段階、1998~2010年までが第2段階で、この第2段階が「500万ha植林計画」と呼ばれています。この計画により、国土に占める森林面積の割合を、現在の28%から43%へ増加させることを目指しています。さらに、農村地域や山岳地帯において、以下の事項を達成することを目的としています。
- 500万haの新規森林造成及び現存する森林930万haの保護によって、森林面積を拡大する。
- 山岳地帯、過疎地域において、未利用地を活用して安定した雇用を創出し、貧困・飢餓を撲滅する。
- 年間1,500万m3の木材生産、1,000万m3の薪炭材生産、製紙100万t及び製材100万m3を生産するための原材料を供給することにより、国内のニーズを満たし、輸出のための余剰を得る。
500万haの森林の内訳は、特別利用林及び保護林200万ha、生産林300万haです。本計画では、第1期(1998~2000年)に新規植林70万ha、既存の森林保護35万haを実施しました。第2期(2001~2005年)には、植林130万ha、森林保護60万ha、第3期(2006~2010年)には植林200万haが予定されています。
環境省地球環境研究総合推進費関連の吸収源プロジェクトの成果
「陸域生態系の吸収源機能に関する科学的評価についての研究の現状」国際ワークショップ 1998年以降、森林総合研究所及び国立環境研究所は環境省地球環境研究総合推進費プロジェクトの1つとして吸収源に関する研究を実施し、知見を蓄積しています。 両研究所の主催により、2001年8月30日に「陸域生態系の吸収源機能に関する科学的評価についての研究の現状」国際ワークショップが開催されました。このワークショップの目的は、日本、米国、欧州の研究情報を交換する場を提供し、吸収源に関する研究の現状について、行政官、企業、一般市民の理解を向上させることです。以下に、ワークショップのプログラムを示します。 プログラム
開会挨拶 池田 俊彌(森林総合研究所) 基調講演
吸収源を巡る国際的動向と研究に期待すること |
木村 祐二(環境省地球環境局) |
地球規模の気候変動を緩和する生物圏のはたらき-IPCCの結論とその意味 |
Roger Sedjo(米国・将来資源研究所) |
二酸化炭素削減手法の経済効率 |
Bo Hektor(スウェーデン農科大学) |
木材製品の炭素勘定 |
Justin Ford-Robertson
(ニュージーランド森林研究所) |
研究発表
航空レーザー測距による森林バイオマスと葉面積の広域モニタリング |
末田 達彦(愛媛大学) |
炭素吸収源としての森林土壌の役割 |
高橋 正通(森林総合研究所) |
林業統計を利用した炭素蓄積量推定手法の改善 |
松本 光朗(森林総合研究所) |
木材利用による二酸化炭素排出軽減への寄与 |
林 和夫(愛媛大学) |
建築物中の木材炭素ストック量の評価 |
外崎 真理雄(森林総合研究所) |
木造住宅及びリサイクル利用による炭素貯蔵と耐用年数 |
有馬 孝礼(東京大学) |
モンスーンアジアでCDMを実施する場合の人工林の炭素固定量評価 |
森川 靖(早稲田大学) |
大規模造林が地域の社会経済に与える影響 |
横田 康裕(森林総合研究所) |
その他の動き
(1)東京電力 オーストラリア・ニューサウスウェールズ州森林局の植林プロジェクトへの参加
ニューサウスウェールズ州は1998年11月に州法を改正し、世界で初めて植林によって吸収・固定された炭素に対する法的権利を設定しました。これを背景に、同州森林局が州内での植林による大気中のCO2吸収・固定プロジェクトを東京電力に提案し、2000年から10年間に渡ってニューサウスウェールズ州に炭素吸収及び木材生産のための植林地を創設する契約が結ばれました。 初年度には1億8,000万円を投資して1,000haの植林を実施し、10年の間に植林面積を10,000~40,000haの規模に拡大することを目標としています。東京電力は植林による大気中のCO2の吸収・固定を主目的として投資を行い、これにより将来の炭素クレジット獲得を期待しています。州森林局は用地の確保(原則として民間の土地所有者からリースした土地を利用)、森林の創設及び管理に必要な許可・同意の獲得、植林地の創設・管理・保全、木材の販売、炭素アカウントの管理を行います。 事業の概要
- 事業内容:初年度1,000ha、将来的には10,000~40,000ha規模での植林の実施。
- 樹種:初年度は硬木50%、軟木50%。
- 炭素吸収・固定量:10,000haの土地に植林したとすると、年間30,000t-C程度の炭素クレジットの獲得が期待されます。これは、出力60万kW級(設備利用率70%程度)の石油火力発電所が排出するCO2量の約20日分に相当します。
- 期待される副次効果:雇用の創出、リースされた土地の所有者の定期的な収入。
(2)三菱製紙 オーストラリア・タスマニア植林事業
三菱製紙(株)及び三菱商事(株)は、地域環境保全への協力と将来のパルプ材資源の確保を目的として、1996年からオーストラリアのタスマニア州北東部において植林事業を行ってきました。COP3における京都メカニズムの決定を受けて、両社は植林事業の拡張、森林資源の活性化、土地の有効利用の促進を検討するようになりました。東京電力は、炭素クレジットの取得を期待できることから、2000年1月以降、この植林事業に対して出資参加を行っています。東京電力の参加によって事業の拡大が実現し、総事業費は8,000万豪ドルから9,000万豪ドル(約63億円)に増大、目標植林面積は当初計画の22,500haから25,500haへと拡張されています。 事業の概要
- 事業内容:植林面積は年間1,700ha、合計25,500ha。2012年からは年間約50万tの植林木を販売。
- 事業地:タスマニア州北東部ロンセストン周辺
- 樹種:ユーカリ(グロビュラス、ナイテンス)
- 総事業費:9,000万豪ドル(約63億円/出典より)
- 炭素固定量:13万t/年(試算)
(3)コスモ石油 豪州CO2(二酸化炭素)排出権オプション契約
コスモ石油(株)は、京都メカニズムを温室効果ガス削減に効果的かつ必要不可欠な制度であると同時に、新たなビジネス機会を創出するものであると認識しています。このことから、Australian Plantation Timber Limited(APT社)とCO2排出権のオプション契約を締結しています。 契約内容は、APT社所有の植林地のうち、5,092haから生じるCO2の排出権のオプションをコスモ石油が100万豪ドルで購入するというものです。オプション契約量の100万tは、2001年以降の11年間にコスモ石油があらかじめ定められた価格で購入できますが、超過吸収分についてもコスモ石油が市場価格で優先的に購入できることになっています。現在、対象植林地のCO2吸収は総量約280万tが見込まれており、超過分は180万tに達すると想定されます。 事業の概要
- 事業地:西オーストラリア州フランクランド(パースの南約200km)
- 樹種:ユーカリ
- 伐期:約11年
- 契約の概要契約形態:オプション契約
- オプション料:100万豪ドル(約6500万円/2001年7月現在)
- 契約期間:2001年~2012年 11年間
- 排出権数量:約280万t-CO2(内訳:オプション契約量100万tと超過分180万tの総量(推定))
- 契約先:Australian Plantation Timber Limited
(4)大阪ガス オーストラリアにおける植林事業
大阪ガス(株)と三井物産(株)は、2000年10月にオーストラリアにおいて共同で植林事業を実施するための現地法人“Eco Tree Farm Pty. Ltd.”を設立しました。 この植林事業では、西オーストラリア州において、2001年から30年間にわたって毎年100haづつ(延べ1,000ha)、ユーカリの植林を実施し、これを2回行います。成木後は伐採し、既に当地において植林事業を展開している日本製紙と三井物産の植林共同事業体を通じて、日本製紙(株)に製紙原料として全量が販売されます。 排出権取引の今度の動向次第では、海外での植林事業を通じてCO2排出権の獲得が可能になることも考えられます。 事業の概要
- 事業内容:植林面積は合計1,000ha。成木後は全量を販売。
- 事業地:西オーストラリア州
- 事業期間:2001年から30年間
- 樹種:ユーカリ・グロビュラス
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