2018年5月号 [Vol.29 No.2] 通巻第329号 201805_329006

最近の研究成果 冬季東アジアモンスーンに伴うジェット気流の変動に対する対流加熱と季節内大気擾乱の役割

  • 地球環境研究センター 気候モデリング・解析研究室 特別研究員 廣田渚郎

冬季東アジアモンスーンは、比較的に冷たい大陸上のシベリア高気圧と暖かい海上のアリューシャン低気圧によって特徴づけられる。これらの西高東低の気圧配置と地衡風[1]バランスするモンスーン北風は、日本付近を冷却して、大気上層の西風ジェット気流を強化する。すなわちアジアモンスーンが強(弱)い[2]と、日本上空のジェット気流が強(弱)く[3]なる(図)。一方、ジェット気流の強弱は、低気圧活動などの季節内大気擾乱[4]の振る舞いに影響する。その大気擾乱は、対流活動の凝結加熱や運動量輸送を通して、ジェット気流の強弱にフィードバックする。これらの相互作用プロセスのうち、ジェット気流の変動に対する対流加熱と運動量輸送の役割を数値実験によって定量化した。実験結果では、ジェット気流の変動には、対流加熱の役割が支配的であり、運動量輸送の効果は比較的小さかった。例えば、温暖化による海水温の上昇で日本付近の対流がより活発になった場合、ジェット気流は弱くなると考えられる。

大気上層(300hPa)の東西風の冬季アジアモンスーンが (a) 強い年と (b) 弱い年の合成図。平年値(1958–2015年平均で定義)からの偏差を表示。ハッチは90%の信頼限界で有意な偏差

脚注

  1. 地衡風: 気圧傾度と地球の自転によるコリオリ力がバランスする様に吹く風。
  2. 冬季アジアモンスーンの強弱: 日本の寒冬/暖冬に関わる大気下層の北風の強さで表せられる。
  3. ジェット気流の強弱: ジェット気流の位置する中緯度大気上層の西風の強さで表せられる。
  4. 季節内大気擾乱: 1日〜90日程度(季節内スケール)の周期で変動する大気の乱れ。例えば、数日の時間スケールの低気圧活動。

本研究の論文情報

Roles of Intraseasonal Disturbances and Diabatic Heating in the East Asian Jet Stream Variabilities Associated with the East Asian Winter Monsoon
著者: Hirota N., Ohta M., Yamashita Y., Takahashi M.
掲載誌: J. Climate, 31, 2871–2887, DOI: 10.1175/JCLI-D-16-0390.1.

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