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CGER’S SUPERCOMPUTER MONOGRAGH REPORT Vol.21 Influence of Anthropogenic Aerosol Emissions on Pattern Scaling Projections 人為起源エアロゾルがパターンスケーリング気候予測に及ぼす影響

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本リポートは印刷物にて頒布しています

人間活動に伴う気候変動への適応や緩和は、人類にとって大きな課題になっている。将来の気候変動シナリオは、主に大気海洋結合モデル(Coupled atmosphere-ocean general circulation model; AOGCM)に、二酸化炭素やエアロゾルの排出シナリオを与えることで計算される。将来の社会経済がどのように発達し、それによってどの程度の排出が行われるかは、予測することは出来ないし、ある意味では我々の選択にもよっている。そのため、幅広い社会経済/排出シナリオに対する気候変化シナリオの不確実性を調べることが重要である。しかしながら、AOGCMの計算コストは非常に高いため、幅広い排出シナリオに対して数値実験を行うことは、現実的ではない。この制約を克服するために、パターンスケーリングといわれる手法が開発された。パターンスケーリングではまず、特定の排出シナリオに対するAOGCM実験の出力から、全球平均気温が1℃上昇したときの気候応答の空間パターン(スケーリングパターン)を求める。次に、簡易気候モデルを用いて、様々な排出シナリオに対する全球気温変化の上昇量を計算する。最後に、スケーリングパターンと、簡易気候モデルの全球平均気温予測を掛け合わせることで、様々な排出シナリオに対する気候シナリオの時空間変化を導出する。この手法は、影響評価、適応、緩和などの研究で広く使われてきたが、手法自体の妥当性検証は十分に行われておらず、研究が求められている。

このモノグラフはこれまでに出版された3論文(Shiogama et al. 2010a, 2010b, 2013)で構成される。第1章と第2章は、パターンスケーリングの前提となる「スケーリングパターンは排出シナリオに依存しない」という仮定を検証した。図1は、A2(温室効果ガスとエアロゾルの排出が大きい)とB1(温室効果ガスとエアロゾルの排出が小さい)という排出シナリオをMIROC3 AOGCMに与えた実験における全球平均地上気温変化と全球平均地上降水量変化の散布図である。回帰直線の傾きは、1℃気温上昇に対する降水量の感度(降水量感度)を示す。A2の降水量感度は、B1よりも小さい。同様の降水量感度の排出シナリオ依存性は、ほかのAOGCMでも見つかった(図2)。エアロゾル排出量の違いが、この降水量感度の差をもたらし、パターンスケーリングを用いた水資源影響評価に誤差をもたらすことがわかった。

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図1 年平均全球平均地上気温変化(横軸, K)と全球平均降水量変化(縦軸, %)の散布図。青はB1で、赤はA2シナリオ。回帰直線の傾きは降水量感度を示す

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図2 14のAOGCMにおけるB1シナリオ(横軸)とA2シナリオ(縦軸)の降水量感度(%/K)

降水量のパターンスケーリングの誤差を削減するための方法の一つとして、分離パターンスケーリング法がある。分離パターンスケーリング法では、温室効果ガスとエアロゾルに対するスケーリングパターンと全球平均気温変化を別々に求め、足し合わせることで、気候シナリオを求める。この手法の前提は、「個々の外部強制要因に対する気候応答を足し合わせたものは、全外部強制要因に対する気候応答と一致する」という線形加法性である。第3章では、この線形加法性を検証した。多くの場合で線形加法性は保たれるが、一部の領域の降水量変化に関して、線形加法性が破れることがわかった(図3)。

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図3 MIROC3の「A2シナリオの個々の外部要因に対する気候応答の和」から「A2外部要因に対する気候応答」を引いた残差。陰影は降水量(%/century)で、矢印は鉛直積分した水蒸気の水平移流量(kg/kg m/s/century)。緑のコンターは、統計的に有意な残差を示す

本モノグラムでは、降水量のパターンスケーリングに関して限界が示された。今後、さらなる妥当性検証と、誤差の補正手法の開発が必要である。

参考文献

  • Shiogama H., Emori S., Takahashi K., Nagashima T., Ogura T., Nozawa T., Takemura T. (2010a) Emission scenario dependency of precipitation on global warming in the MIROC3.2 model. J. Climate, 23 (9), 2404-2417.
  • Shiogama H., Hanasaki N., Masutomi Y., Nagashima T., Ogura T., Takahashi K., Hijioka Y., Takemura T., Nozawa T., Emori S. (2010b) Emission scenario dependencies in climate change assessments of the hydrological cycle. Climatic Change, 99 (1/2), 321-329.
  • Shiogama H, Dáithí A. Stone, Tatsuya Nagashima, Nozawa T. and Seita Emori (2013) On the linear additivity of climate forcing-response relationships at global and continental scales. International Journal of Climatology, 33 (11), 2542–2550.

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