2012年7月号 [Vol.23 No.4] 通巻第260号 201207_260007

観測現場から—北アルプス上高地周辺— ブロードバンド化が進む高山帯

環境計測研究センター 環境情報解析研究室 主任研究員 小熊宏之

高山帯の生態系は温暖化などの気候変動の影響を受けやすく、モニタリング(長期観測)の必要性は世界的な共通認識となっています。国立環境研究所地球環境研究センターでは、日本国内の高山帯を対象とし、積雪・融雪時期や植物の活動を把握するため定点での高山帯のモニタリングを開始しました。山小屋の協力により自動撮影カメラを設置させてもらい、積雪・融雪の状況や、そこに生息している植物の活動に関する画像情報を蓄積しています。さて、問題となるのが画像の収集方法です。画像データが保存された媒体を人的手段で回収・交換するのは労力が伴うと共に、時間的な遅れが生じます。しかし、北アルプスの一部では山小屋間と麓とを長距離無線LANで接続するネットワークを構築しており、こういったインフラを使わせてもらうことでリアルタイムに撮影画像を入手することが可能となりました。写真は山小屋に設置された無線LANのアンテナの様子です。棒状のアンテナ2本とパラボラアンテナが他の山小屋を指向しており、相互に通信するようになっています。山小屋利用者への情報提供を行うほか非常時の通信手段としても活躍しており、世界でも類を見ないブロードバンド化が進んだ高山帯と言えるかもしれません。

photo. 蝶ヶ岳ヒュッテ

山小屋の無線LANアンテナ(蝶ヶ岳ヒュッテ)

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