2012年8月号 [Vol.23 No.5] 通巻第261号 201208_261008

オフィス活動紹介:国環研GOSATプロジェクトオフィス 「いぶき」(GOSAT)観測データに基づく温室効果ガス濃度プロダクトの改訂と第4回公募研究代表者国際会議について

打ち上げから3年半が経過しましたが、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)の二つのセンサーTANSO-FTS(Fourier Transform Spectrometer)とTANSO-CAI(Cloud and Aerosol Imager)は、ほぼ順調に稼働しています。GOSATプロジェクトは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、国立環境研究所(NIES)、および環境省(MOE)が共同で推進しています。NIESでは、プロダクトのバージョンアップとその公開を順次進めています。所定のユーザ登録を行えば、どなたでもウェブサイト​(http://data.gosat.nies.go.jp/)​において公開されているプロダクトを入手することができます。

前回の報告(地球環境研究センターニュース2011年5月号)からの進展のうち、最もお伝えすべき事項は、TANSO-FTSから求めたFTS SWIRレベル2プロダクト「L2 CO2およびCH4カラム量(SWIR)」が2012年6月よりV02.xxとして公開され、そのデータの品質が大幅に改善したことです。具体的にはV01.xxに見られたバイアスやばらつきが減少しました。また、これまでデータの品質が悪いと判断され捨てられていた導出点も、データの品質が良くなることで拾われるようになり、導出される領域も拡がりました。事例として2010年7月のカラム平均濃度[注]であるXCO2と XCH4の全球分布図をそれぞれ図1、2((a) V01.30と (b) V02.00)に示します。NIESでは、過去の観測データすべてをV02.xxで処理し、今年中にはその再処理を完了する予定です。また、それに基づくレベル3(空間補間を施した月別全球濃度分布)プロダクトや、TANSO-FTS SWIR L2 XCO2と地上観測データに基づく二酸化炭素のレベル4A(月別領域別の吸収排出量)プロダクトなどを一般ユーザに公開するための内部処理を進めています。

fig. TANSO-FTS SWIR L2 XCO2

図12010年7月のTANSO-FTS SWIR L2 XCO2全球分布図[(a) V01.30, (b) V02.00]
同じ観測データからでも、処理アルゴリズムの改善により、(a) よりも (b) のデータ品質が向上し、極端な高濃度(赤)や低濃度(青)の出現(バラツキ)が低減するとともに、導出される領域(色の付いている領域)が増えました。
*バイアスの変化により (b) は (a) よりもカラースケールを5ppm増加させた。

fig. TANSO-FTS SWIR L2 XCH4

図22010年7月のTANSO-FTS SWIR L2 XCH4全球分布図[(a) V01.30, (b) V02.00]
同様に処理アルゴリズムの改善により、(a) よりも (b) のデータ品質が向上し、導出される領域(色の付いている領域)が増えました。

また、最近の大きなイベントとして、米国カリフォルニア工科大学(Caltech)の協力により、2012年6月20日〜22日に、JAXA、NIES、MOEの共催で、第4回GOSAT公募研究代表者国際会議(RA PI会議)が開催されました(写真)。ここには世界からGOSATデータを利用する登録研究者が参集し、校正、データ処理アルゴリズム、炭素収支推定・大気輸送モデル、検証、データ利用の各研究分野に関して43件の研究発表が行われました。参加者は73名を数え、活発な議論が展開されました。GOSATのデータの品質改善により、今後それらに基づく科学的な研究がますます進むことが期待されます。

photo. 第4回GOSAT公募研究代表者国際会議

写真第4回GOSAT公募研究代表者国際会議(米国カリフォルニア州パサディナ市カリフォルニア工科大学)

脚注

  • 地表面だけでなく、上空までの鉛直の柱(カラム)の中にある乾燥空気全量に対する対象気体量の比率を示す平均濃度のこと。

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