2014年10月号 [Vol.25 No.7] 通巻第287号 201410_287008

【最近の研究成果】 衛星「いぶき」(GOSAT)から得られたメタン濃度の検証—世界28か所の航空機観測データを用いて—

  • 地球環境研究センター 衛星観測研究室 特別研究員 井上誠
  • 地球環境研究センター 森野勇, 内野修, 吉田幸生, 横田達也, 町田敏暢 ほか

主要な温室効果ガスである二酸化炭素とメタンの全球濃度分布を明らかにするために、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT, http://www.gosat.nies.go.jp/index.html)が2009年1月に種子島から打ち上げられ、2014年現在まで継続して観測を行っている。GOSATデータの科学研究への利用のためには、信頼性の高い観測データを用いたデータ質の評価(検証)を行う必要がある。昨年度報告した航空機観測データによる二酸化炭素濃度の検証論文[1]に続き、われわれは、GOSATに搭載されている温室効果ガス観測センサ(TANSO-FTS[2])の短波長赤外域から推定されたメタンのカラム平均濃度データ(2012年6月に公開されたVer. 02.00)の検証を行った。検証に用いたデータは、米国海洋大気庁(NOAA)、米国エネルギー省(DOE)、国立環境研究所(以下、国環研)、米国の研究航空機HIAPERによる大気観測キャンペーン(HIPPO, https://www.eol.ucar.edu/field_projects/hippo/)、及び国環研と宇宙航空研究開発機構(JAXA)の共同観測による計28か所の航空機観測データであり、その分布はユーラシア域、オセアニア域、北米大陸を中心として広範囲に及ぶ(図1)。高度ごとに得られた航空機観測データからメタンのカラム平均濃度を算出し、観測地点近傍のGOSATデータと比較した。その結果、GOSATのメタンの方が陸域で1〜2ppb程度、海域で4〜7ppb程度高い傾向にあるものの、GOSATデータと航空機観測データは概ねよい相関を示した(図2)。今後、GOSATデータを用いたメタンの研究が活発に行われていくことが期待される。

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図1GOSATの検証に用いた航空機観測地点

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図2GOSATと航空機観測により得られたメタンのカラム平均濃度の相関図。緑色、青色の点はそれぞれ陸域、海域のGOSATデータ。赤色、青色の実線はそれぞれ陸域、海域データの回帰直線で、黒い実線は両データが一対一に対応する線

本研究の論文情報

Validation of XCH4 derived from SWIR spectra of GOSAT TANSO-FTS with aircraft measurement data
著者: Inoue M., Morino I., Uchino O., Miyamoto Y., Saeki T., Yoshida Y., Yokota T., Sweeney C., Tans P. P., Biraud S. C., Machida T., Pittman J. V., Kort E. A., Tanaka T., Kawakami S., Sawa Y., Tsuboi K., Matsueda H.
掲載誌: Atmospheric Measurement Techniques (2014) doi:10.5194/amt-7-2987-2014.

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