2013年12月号 [Vol.24 No.9] 通巻第277号 201312_277008
【最近の研究成果】 衛星「いぶき」(GOSAT)から得られた二酸化炭素濃度の検証 —世界47か所の航空機観測データを用いて—
主要な温室効果ガスである二酸化炭素とメタンの全球濃度分布とそれらの変動を明らかにするために、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT, http://www.gosat.nies.go.jp)が2009年1月に打ち上げられ、順調に観測を続けている。GOSATは現在稼働中の数多くの衛星の中で対流圏の温室効果ガスの観測を主目的とする唯一の衛星であるが、GOSATデータが科学的に利用されるためには信頼性の高い観測データによるデータ質の評価(検証)が必要である。
そこでわれわれは、民間航空機を利用した大気観測プロジェクト(CONTRAIL[1], http://www.cger.nies.go.jp/contrail/)、NOAA、米国エネルギー省(DOE)、国立環境研究所、米国の研究航空機HIAPERを用いた大気観測キャンペーン(HIPPO, http://www.eol.ucar.edu/projects/hippo/)、及び国立環境研究所と宇宙航空研究開発機構(JAXA)の共同観測による航空機観測データを用いて、GOSAT に搭載されている温室効果ガス観測センサ(TANSO-FTS[2])の短波長赤外域から推定された二酸化炭素のカラム平均濃度データ(2012年6月に公開されたVer. 02.00)の検証を行った。検証に用いた航空機観測の地点は47か所であり、その分布はアジア・オセアニア域、シベリア域、北米大陸、ヨーロッパを中心として広範囲に及ぶ(図1)。高度ごとに得られた航空機観測データから二酸化炭素のカラム平均濃度を算出し、観測地点近傍のGOSATデータと比較した。その結果、GOSATの二酸化炭素の方が1〜2ppm程度低い傾向にあるものの、GOSATデータと航空機観測データはよい一致を示した(図2)。今後、GOSATデータを用いた温室効果ガスの研究が活発に行われていくことが期待される。
脚注
- 町田敏暢「CONTRAILプロジェクトが始まって5年経ちました」地球環境研究センターニュース2010年12月号
- 吉田幸生「長期観測を支える主人公—測器と観測法の紹介— [4] 避けては通れない雲とエアロゾル:宇宙から温室効果ガス濃度を推定するTANSO-FTS」地球環境研究センターニュース2012年12月号
本研究の論文情報
- Validation of XCO2 derived from SWIR spectra of GOSAT TANSO-FTS with aircraft measurement data
- 著者: Inoue M., Morino I., Uchino O., Miyamoto Y., Yoshida Y., Yokota T., Machida T., Sawa Y., Matsueda H., Sweeney C., Tans P. P., Andrews A. E., Biraud S. C., Tanaka T., Kawakami S., Patra P. K.
- 掲載誌: Atmospheric Chemistry and Physics (2013) doi:10.5194/acp-13-9771-2013