2015年8月号 [Vol.26 No.5] 通巻第297号 201508_297002

新しい国立環境研究所スーパーコンピュータ(SX-ACE)の導入

  • 環境情報部
  • 地球環境研究センター

1. 更新された国立環境研究所スーパーコンピュータ(SX-ACE)

国立環境研究所コンピュータシステムを構成しているベクトル型スーパーコンピュータを更新し、平成27年6月1日から運用を開始しました。新スーパーコンピュータ稼働にあたり、新スーパーコンピュータ「SX-ACE」の稼働式を行いました。稼働式(写真1)では、住明正理事長による挨拶(写真2)、環境情報部長による新スーパーコンピュータ導入に至る経緯報告、本コンピュータシステムを納入した日本電気株式会社(NEC)から新スーパーコンピュータの概要紹介がありました。最後に住理事長によるスーパーコンピュータの「火入れ」を行いました(写真3)。

今回のスーパーコンピュータの導入は2段階調達で行っています。平成25年6月より前スーパーコンピュータ(SX-9)の稼働を始め、2年後の本年6月より2段階目の新たなスーパーコンピュータ(SX-ACE)の稼働を開始しました。

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写真1稼働式における新スーパーコンピュータシステムの説明

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写真2住明正理事長による挨拶

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写真3SX-ACEの稼働スイッチを入れる(住明正理事長)

「SX-ACE」は2013年11月に発売されたNEC製のベクトル型スーパーコンピュータです。主な特徴・前機種との性能比較は下記及び表のとおりです。

  • (1)多数の計算を一括処理する性能が高い特徴をもつベクトル型スーパーコンピュータです。
  • (2)計算速度が前機種の7.5倍[注]の性能をもち、省エネ性能、省スペース化が実現されています。
  • (3)全メモリ(主記憶装置)容量は前機種の6倍になります。
  • (4)ノード数(コンピュータの台数)は前機種の48倍になります。
  • (5)全CPU数(コンピュータの頭脳の数)は前機種の12倍になります。

前システム(SX-9/A(ECO))との性能比較

  前機種 SX-9 新機種 SX-ACE
ノード数 8 ノード 384 ノード
CPU数 128 個 1536 個
理論演算性能 13.1 TFLOPS 98.3 TFLOPS
メモリ容量 4 TB 24 TB

2. スーパーコンピュータを利用したさまざまな研究

スーパーコンピュータシステムは、大気や海洋における複雑な自然現象の再現や将来予測を長期かつ全球的に計算することや、地球上の生物個体や環境の情報を過去から現在にわたり蓄積して解析する膨大な処理に使われるなど、地球環境の中で起こるさまざまな現象・問題を扱う研究に利用されています。

例として、将来の地球温暖化により地表付近の気温がどのように変化するか、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が想定している最新シナリオごとに数値シミュレーション(図1)を示します。また、福島第一原子力発電所事故の結果放出された放射性物質の海域での動態解明と将来予測(図2)等、幅広い分野で大きな成果を上げています。

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図1IPCC第5次評価報告書のシナリオに基づく2050年の地表気温のシミュレーション比較 [クリックで拡大]

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図2福島第一原子力発電所の事故により放出されたセシウム137の海表面水及び海底土表層への拡散予測 [クリックで拡大]

毎年のスーパーコンピュータ研究課題名とその概要については下記ウェブサイトから閲覧することができます。

http://www.cger.nies.go.jp/ja/activities/supporting/supercomputer/index.html

脚注

  • これは「総理論演算性能」の比較であること にご注意下さい。流体力学コードなど特定の構造をもったアプリケーションにおいて、「理論演算性能」に対する「実効性能」の比は、ベクトル処理用計算機がスカラ処理用計算機よりも優れています。

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