CGER探検隊による研究紹介「噂の研究現場」

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西表島で風船を飛ばすって!?森林の二酸化炭素吸収問題

台風の影響

島の天気はかわりやすいようです。この日は昼から遠くの台風の影響で風が強く、地上に用意していたゴム風船が風にあおられ飛ばす前に壊れたりたりしたため、ゾンデ観測は一時中断となりました。台風は太平洋側に遠くにいるにしても、北東の風が強く天候が悪くなる一方です。このまま北東風では今の観測地点の配置では西表島の森の吸収を調べるのにはあまり良くないとのことです。

シアン

なぜ北東の風が良くないんですか、野村さん。

野村さん

森の吸収を調べるためには、風上と風下の地点が必要なのに、西表は、西南の端にいけないので、観測点がつくれないのです。北東の風はもっとも都合の悪い風向きなんです。白浜小学校は、西、交流センターは南です。風上と風下にならないんです。それに、風が強いと係留観測もできないんです。

シアン

そうなんですか。

急遽、白浜小学校チームが交流センターの基地に向い今後の作戦会議を行いました。

涅槃仏ではありません

西表島での調査の滞在日数は限られています。フィールドワークは天候や様々な条件に左右されます。暑い中一息入れようと向井リーダーがコーヒーを差し入れます。ここからなにか展開されるでしょうか……。

向井リーダー

風向きやね。

寺尾サブリーダー

ですね。

向井リーダー

残された滞在で気球をどう上げるかだけどね。

野村さん

思い切って観測場所を古見小学校に変更してみましょうか。校長先生に聞いてみますか。

寺尾サブリーダー

それはやってみる価値あるね。

向井リーダー

ただ、係留気球でもここではほしいところの高さまで測れないので、低層の観測をどうするかやね。結局、問題はゾンデの上昇速度や。これまでの観測では上昇速度がちょっと早すぎて低い高度のデータがとれない……。何か、ゾンデの上昇を調整する方法はないものか……。

シアン

どうして、低いところのデータがほしいのでしょうか?

野村さん

それはですね。西表の山は500m程度で、森林の吸収も地上からその高さで起こります。その程度の高さの大気の濃度変化が知りたいんです。

野村さんによると、ゾンデを上げて気象条件(気圧、気温、湿度、風向・風速)を測るのは通常気象庁でも定期的に行われていますが、CO2濃度を測るにはそれとは少し条件が異なるそうです。それだけに難しく、試行錯誤が必要です。

今回はその試行錯誤のひとつとして、向井リーダーの発案により、ある創意工夫が行われることになりました。ゴム気球は上げた瞬間の上昇速度が速いので、その上昇を緩やかなものにするために、ビニール袋に水(400ml)を入れ、袋の底に穴をあけ、水が徐々に減っていく仕組みをつくり、それをゾンデに取り付けます。ちょっと重さを大きくして風船が上がっていく速度を抑えようということらしいです。

シアン

でもなぜ水は入れっぱなしではいけないのでしょうか?

藍川研究員

ただ重くするだけと、全体の上がる速度が遅くなって、うまく上がりきらなかったり、観測のための標準ガスが上の方でなくなってしまいます。高いところの上昇速度はそのままにして、低いとこだけ上昇速度を落としたいのです。例えば、最初の10分程度の間でなくなるように水を少しずつ落としていくようにしたいのです。

シアン

ふむ。ふむ。