ココが知りたい温暖化

Q12太陽黒点数の変化が温暖化の原因?

!本稿に記載の内容は2014年7月時点での情報です

太陽の黒点数の変化と気温の変化との間に強い相関があると聞きました。ということは、太陽活動の活発化が温暖化の主要な原因なのではないのでしょうか。

野沢徹

野沢徹 大気圏環境研究領域 大気物理研究室長 (現 岡山大学大学院自然科学研究科 教授)

太陽黒点数の変化は、太陽から地球に降り注ぐ放射エネルギーの変化をもたらすため、地球の平均気温を変化させる可能性はあります。しかし、地球の平均気温は、太陽活動だけでなく、大規模な火山噴火、温室効果ガスや大気汚染物質の増加などによっても変化することに注意が必要です。最新の観測データを見ますと、20世紀半ば以降、長期的には太陽黒点数はほぼ横ばいか減少傾向を示しており、太陽活動が活発化しているとは考えられません。すなわち、太陽活動が近年の温暖化の主要な原因であるとは考えられません。

太陽黒点数の変化は気温の変化をもたらし得る

太陽黒点は太陽表面に見られる黒いしみのような領域を指し、周囲よりも温度が低いために黒く見えています。複数の黒点がまとまって発生することが多く、このまとまりを黒点群と呼びます。太陽黒点数の定義には複数ありますが、一般によく使われているのは黒点相対数と呼ばれるもので、黒点群の数と個々の黒点群に含まれる黒点数から算出され、太陽活動の変化をよく表現した指標として知られています(以降、黒点数 = 黒点相対数とします)。

太陽表面には、黒点の他にも白斑と呼ばれる周囲より温度が高い(= 明るい)領域も存在し、黒点の近くによく現れます。太陽の明るさは、黒点により暗くなる効果と白斑により明るくなる効果のバランスによって決まりますが、白斑の効果がわずかに上回るため、太陽黒点数が増えると太陽の明るさも増加します。この “太陽の明るさ” は地球に降り注ぐ太陽放射エネルギーに相当し、地球の気候システムの駆動源となっています。そのため、太陽黒点数の変化に応じて地球の平均気温が変化することは十分考えられます。

気温を変化させる要因はさまざま

一方で、地球の平均気温を変化させる要因は、何も太陽エネルギーの変化だけに限られているわけではありません。二酸化炭素(CO2)をはじめとする温室効果ガスの増加が気温の上昇をもたらすことはよく知られていますし、大規模な火山噴火により成層圏にまで運ばれた火山性ガス(亜硫酸ガスや硫化水素など)から生成される硫酸エアロゾル(硫酸液滴の微粒子)は、地表面に届く日射を遮ることで気温の低下を招きます。同様の効果は、人間活動に伴う大気汚染物質の放出によっても引き起こされます。逆に、煤などは日射を吸収することで地球の大気を暖める効果をもっています。オゾン層の変化や森林破壊(耕作地の拡大)なども地球の気温に影響を与えています。また、これらの要因がなくても、自然界の長い時間の中で変動する “気候の揺らぎ”[注]も存在し、これによっても気温は変動します。地球の平均気温が変動する原因を考える際には、これらのさまざまな要因についても検討しなければならないことに注意が必要です。

太陽活動は近年の温暖化を説明できない

以上を踏まえた上で、実際に観測された過去160年間の太陽黒点数と地球の平均気温の変化(図1)を見てみましょう。太陽黒点数は約11年の周期をもって増減を繰り返していますが、その最大値は必ずしも一定ではなく、周期ごとに異なっています。この最大値の変化と地球の平均気温の変化を比較しますと、19世紀後半から20世紀前半にかけては、たしかに両者の相関が高いように思われます。しかし、この時期にはすでに温室効果ガスも徐々に増加し始めており、それに伴う気温上昇も考慮しなければなりません。じつは、この時期に観測された気温変化の原因についてはまだよくわかっていませんが、太陽活動の長期的な変化だけでは説明できないと考えられています。

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図1太陽黒点数(青色の陰影部)と地球の平均気温(赤実線)の経年変化(Solar Influences Data Analysis Center (http://sidc.oma.be/) の太陽黒点数のデータおよび、U.K. Met. Office (http://www.metoffice.gov.uk/) の地球の平均気温のデータを元に作成)。地球の平均気温は1961〜1990年の30年平均値からの偏差を示している

一方で、20世紀半ば以降には、太陽黒点数の長期的な変化はほぼ横ばいかむしろ減少傾向を示しており、そもそも太陽活動が活発化しているとは思われません。つまり、太陽活動の活発化が最近の温暖化の主要な原因であるとは考えられません。気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change: IPCC)の第4次および第5次評価報告書でも紹介されていますが、気温を変化させる可能性のあるさまざまな効果をできるだけ考慮に入れた最新の研究によれば、CO2をはじめとする温室効果ガスの増加を考えなければ、20世紀半ば以降に観測された温暖化を定性的にも定量的にも説明できないことが明らかになっています。

太陽活動が間接的に気温を変化させる仮説は信憑性が低い

ここまでは、太陽活動が地球の平均気温に及ぼす直接的な影響についてお話ししてきました。一方で、太陽活動が地球の平均気温に対して間接的に及ぼす影響についても複数の仮説があり、最近では、地球に到達する宇宙線(宇宙空間を漂っている電気を帯びた原子核)と雲量が関係する説が注目されています。太陽活動が活発な時期には磁場が大きく乱されるため地球に到達する宇宙線が減少しますが、それに伴って地球を覆っている雲の量が減少し、地表に到達する日射量が増加するために気温が上昇する、とする説です。ここでのポイントは宇宙線強度と地球の雲量の関係で、この説によれば、宇宙線により大気中に生成されたイオンが種となって雲を生成する、とされています。たしかに、定性的な説明としてはあり得ますが、過去二十数年間の観測データからは、宇宙線量と雲量の間に明瞭な相関関係があるとは言えません。また、このようにして生成される雲は地球全体の雲量のどのくらいの割合を占めるのか、など、定量的にはまだまだ多くの不明な点が残されています。温室効果ガスの増加に伴う気温上昇に関して、大気中のCO2が2倍に増えたときにどのくらい気温が上昇するか、などの定量的な議論が行われていることと比較しますと、太陽活動-宇宙線-雲の変化による温暖化説は、現段階では信憑性が低いと言わざるを得ません。今後の研究次第では、太陽活動-宇宙線-雲の変化をはじめとする太陽活動の間接的な影響による気温上昇の定量的な議論が可能になるかもしれませんが、それによって、温室効果ガスの増加に伴う気温上昇が無視されることは考えられず、温室効果ガスの増加が最近の温暖化の主要な原因の一つであることは間違いありません。

気候の揺らぎとは、太陽からの放射エネルギーの変化や大規模な火山噴火、人間活動に伴う温室効果ガス排出量の増加など、気候システムの外部からの強制が一切なくても、大気や海洋、雪氷などが相互作用することにより生じる変動を指します。エルニーニョだけでなく、冷夏や暖冬などの年々変動も気候の揺らぎの一部と考えられます。

さらにくわしく知りたい人のために

  • 山本義一編(1979) 気候変動(特に第1章「過去の気候」).東京大学出版会.
  • J.A. Eddy著, 上出洋介・宮原ひろ子訳(2012) 太陽活動と地球-生命・環境をつかさどる太陽(特に第8章「地球の天気と気候への影響」). 丸善.
  • W.J. バローズ著, 松野太郎監訳 (2003) 気候変動-多角的視点から(特に第8章「気候変動の原因」).シュプリンガー・フェアラーク東京.

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