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省エネ製品に買い替えるべき?
質問

省エネ製品に買い替えるべき?

冷蔵庫などの家電機器は、どんどん省エネ効率が良くなっていると聞きますが、まだ使えるのを捨てるのはもったいない気がします。私はいつ買い替えればよいのでしょうか。
循環型社会・廃棄物研究センター 循環技術システム研究室 主任研究員 田崎 智宏
その製品をどのくらいの頻度で使っているのか、買い替えによってどれだけ省エネ効果が得られるのかなどの条件によって答えが変わるので、一概にはいえません。ただし、エネルギー消費や温室効果ガスの排出だけを考えた場合よりは、資源のもったいなさを考慮した方が最適な買い替え時期が遅くなります。現在よりもより的確な判断ができるように、メーカー等にさまざまな製品の環境負荷データの公開を求めていくことは大切なことです。

環境面から買い替えの是非を判断する方法

図1

[図1]買い替えるべきかを判断するための環境負荷の大小関係の概念図

新しい省エネ製品に買い替えるべきか、それとも今の製品を使い続けたらよいか、どちらが環境によいのかの判断に用いられる方法は、ライフサイクルアセスメント(LCA)という評価方法、もしくはLCAと同様な考え方をベースにしています。LCAは、製品などが引き起こす環境負荷をその製品の製造段階やその製品に用いられる原料や材料の製造段階、消費者が使用する使用段階、その後の廃棄・リサイクルの廃棄段階などのすべての段階(ライフステージといいます)について求めるものです。これを、買い替えをする/しないというように複数の条件に適用することで、環境負荷の大小を比較・評価することができます。

買い替えを判断する場合は、この「すべての段階」をどの範囲とするかが少し複雑です。単純化すると、現在使用している製品(現保有製品)を継続して使う場合には、図1(a)の左側に赤で示したエネルギー消費量が今後の製品使用により発生します。一方、省エネ製品に買い替えをする場合には使用時のエネルギー消費量が減るので、右側の赤で示したように、環境負荷は小さくなります。しかし、買い替えで購入する製品を製造するためなどの追加的なエネルギーが消費されますので、買い替える場合にはこの分を計上する必要があります(正確には、買い替えで購入する製品の製造等のエネルギーをすべて計上するのではなく、比較する年数分だけを計上しなければならないなど、もう少し複雑になります)。そのほか、現保有製品を廃棄するためのエネルギー消費が発生しますが、これは継続使用の場合も最終的には廃棄することとなりますので、両方のケースに計上されます。両者を比較すると、「いつ買い替えればよいか」は使用時と製造時のエネルギー消費の大小関係に大きく左右されることが分かります。この大小関係は製品種や考慮している環境負荷によって異なり、例えば、ノートパソコンは全エネルギー消費の半分以上が使用段階以外で発生しており、使用時のエネルギー効率がよほど大幅に改善しない限り、買い替えはお薦めできません。一方、エアコンと冷蔵庫は、全エネルギー消費に比べて使用段階におけるエネルギー消費が占める割合がかなり大きいことに加え、近年の省エネ化が大きく進行しているので、早期の買い替えであっても環境面で有利です。エネルギー資源以外の資源消費を考慮した場合でも、この優位性は変わりそうにありませんが、まだはっきりとしたことはいえません。ただし、エネルギー資源以外の資源の消費については、図1(b)のように使用時以外での寄与が大きい製品が多く、これを考慮しない場合よりも買い替えのタイミングを遅くすべきということは多くの場合にあてはまることといえるでしょう。

現状の消費者向け買い替え判断ツールを用いる際の注意点

買い替えの是非を検討したこれまでの研究の多くは、エネルギー資源の消費や温室効果ガスの排出に着目しています。例えば、消費者向けの買い替え判断ツールとしては、トヨタの「エコ替え」や京都地球温暖化防止府民会議の「省エネ家電普及診断プログラム」があります。前者は個別の車種ごとの使用中のエネルギー消費(燃費)のみを考慮したものです。自動車のLCA評価では、全ライフステージのエネルギー消費のうち2割程度が使用段階以外で生じています。「エコ替え」ではこの2割のエネルギー消費が考慮されていないので、エネルギー消費だけを考えた場合でも、本当によい買い替え時点よりも早く自動車を捨ててしまうことになります。燃費のよいハイブリッド車などは、製造時のエネルギー消費量が従来車よりも大きいので、さらに買い替えのタイミングを遅らせるべきです。

実際の買い替え判断はさらに複雑

ところで、実際の買い替え判断はさらに複雑です。まず、消費者がその製品をどのくらいの頻度で使っているのか、買い替えない場合にその製品を何年使うのかによっても、図1の赤の部分の大きさが変わりますので、青の部分との大小関係が変わる、すなわち買い替えるタイミングが変わります。例えば、エアコンの使用段階におけるエネルギー消費量は使用頻度によって倍以上の違いがあります。あまり使っていないものについては遅めの買い替えの方が有利になります。それから、より大型の製品に買い替える場合はエネルギー消費量が増えることも多いので注意が必要です。また、プラズマテレビなどの新しいタイプの製品については、製造時などの環境負荷データが公表されていないなど、データ制約により判断ができない製品もあります。さらに、今後発売される省エネ製品のエネルギー消費改善率をどの程度に見込むかによっても買い替えのタイミングは異なってきます。加えて、上述した計算は製品カタログ等に記載されているエネルギー消費量に基づいて行われますが、カタログ値と実測値にはある程度の乖離が生じます。

現在よりもより的確な判断ができるように、メーカーや小売業者等にさまざまな製品の全ライフステージにおける環境負荷データの公開を求めていくことは大切なことでしょう。

さらにくわしく知りたい人のために
○ 安井至(1999)どちらが環境負荷が低いか-冷蔵庫買い替え編
http://www.ne.jp/asahi/ecodb/yasui/RefUseOrBuy.htm
○ インバースマニュファクチャリングフォーラム監修(2004)インバースマニュファクチャリングハンドブック(2.7節 迅速循環ライフスタイルの実現可能性), 72-77
○ トヨタ、エコ替え http://ecogae.jp/
○ 京都地球温暖化防止府民会議(2006)省エネ家電普及診断プログラム
http://www.kcfca.or.jp/center/kaden/

地球環境研究センターニュース2008年9月号(2008年10月15日発行)に掲載]