ココが知りたい温暖化

温暖化の科学
温暖化の影響
温暖化と極端な気象現象との関係
温暖化の対策
質問

温暖化と極端な気象現象との関係

猛暑だったり桜の開花が例年より早かったり、ちょっと変わったことがあると何でも地球温暖化のせいみたいな報道がされますが、本当なのですか。
私が答えます:社会環境システム研究領域長 原沢 英夫

地球温暖化と極端な気象現象との関係

2007年2月2日にIPCC(気候変動に関する政府間パネル)第1作業部会の第4次評価報告書(気候変動2007 自然科学的根拠)が発表されました。この報告書では、気候システムに温暖化が起こっていると断定するとともに、人為起源の温室効果ガスの増加が温暖化の原因であるとほぼ断定しています(文部科学省他, 2007)。地球の平均気温が過去100年に0.74℃上昇し(1906~2005年)、最近の50年間では、過去100年の2倍の速さで温暖化が進んでいることがわかりました。また、極端な気象現象との関係もより明らかになってきました。IPCCでは干ばつ、大雨、熱波、熱帯低気圧(ハリケーンや台風を含む)を「極端な気象現象」と呼んでいます(よく使われる「異常気象」は、30年に1回発生するような非常に希な気象現象を指しますが、「極端な気象現象」は異常気象も含むより広範囲な現象をいいます)。

表は、「極端な気象現象」のうち20世紀後半の観測から変化傾向がみられた現象の最近の傾向(A欄)、その傾向に対する人間活動の寄与の可能性(B欄)、21世紀の予測に基づく傾向の継続の可能性(C欄)を表したものです。例えば、猛暑をおこす高温/熱波の頻度の増加に関しては、20世紀後半に起こった可能性が高く、人間活動の寄与の可能性は「どちらかと言えば」と評価されています。気候モデルの予測からは将来、温暖化により高温/熱波の頻度が増加することは、可能性がかなり高いと評価されています。

表 「極端な気象現象」のうち20世紀後半の観測から変化傾向がみられたものの最近の傾向、その傾向に対する人間活動の影響評価、および予測(気象庁, 2007)

現象及び傾向 (A) 20世紀後半(主に1960年以降)に起こった可能性 (B) 観測された傾向への人間活動の寄与の可能性 (C) SRESシナリオを用いた21世紀の予測に基づく傾向の継続の可能性
ほとんどの陸域で寒い日/夜の減少と昇温 可能性がかなり高い 可能性が高い ほぼ確実
ほとんどの陸域で暑い日/夜の頻度の増加と昇温 可能性がかなり高い 可能性が高い(夜) ほぼ確実
ほとんどの陸域で継続的な高温/熱波の頻度の増加 可能性が高い どちらかと言えば 可能性がかなり高い
ほとんどの地域で大雨の頻度(もしくは総降水量に占める大雨による降水量の割合)の増加 可能性が高い どちらかと言えば 可能性がかなり高い
干ばつの影響を受ける地域の増加 多くの地域で1970年以降可能性が高い どちらかと言えば 可能性が高い
強い熱帯低気圧の数の増加 いくつかの地域で1970年以降可能性が高い どちらかと言えば 可能性が高い
高潮の発生の増加(津波を含まない) 可能性が高い どちらかと言えば 可能性が高い

一方、竜巻、ひょう、雷、砂じんあらしといった小規模な現象については、何らかの傾向が存在するかどうかを判断する十分な根拠がないと評価されています。

ところで、例えば、今年の暖冬傾向が温暖化のせいであるかどうかを直接的に証明することは容易ではありません。今年に関しては、エルニーニョと呼ばれる地球規模の気象現象が大きく影響していると見られています。それに、温暖化の影響が加わっているかも知れません。つまり、温暖化すれば傾向としてはこうなるということは言えますが、個別の事象として、こうなるはずのことが起きたからといって、それがすべて温暖化のせいだとは言い切れないこともあるということです。

雪氷や生態系、人間社会への温暖化の影響

過去100年間に地球の平均気温は0.74℃上昇していることから、 その影響がいろいろな傾向として現れています。IPCCの第3次評価報告書(IPCC, 2001)では、影響に関する多数の研究論文を精査した結果、現在すでに現れている温暖化の影響として、以下の現象をあげています。

  • 山岳の氷河の縮小や後退
  • 永久凍土の融解
  • 河川・湖沼の結氷期間の短縮
  • 中・高緯度地域の生長期間の延長
  • 植物・動物生存域の極方向や高地への移動
  • 植物・動物種の生育数の減少
  • 開花時期、昆虫の出現、鳥の卵生の早期化

最近では、上記の雪氷や陸域生態系への影響に加えて、次のような影響も報告されています。

  • 海洋の酸性化
  • 海洋・淡水生態系への影響(サンゴ礁の劣化・消失、北大西洋のプランクトンの北上など)
  • 人間社会・経済活動への影響
  • 農業への影響(アフリカのサヘル地域の干ばつによる穀物収量減少、ブドウ栽培への影響など)
  • 人の健康影響(熱波の増加、生物媒介性・水媒介性感染症の増加など)

現在とりまとめが進んでいるIPCC第2作業部会の第4次評価報告書(2007年4月6日頃公表予定)では、温暖化の影響について1章があてられており、非常に多くの影響事例が報告される予定です。

さらに良く知りたい人のために
○文部科学省・経済産業省・気象庁・環境省 (2007) 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第4次評価報告書 第1作業部会報告書(自然科学的根拠)の公表について. 報道発表資料平成19年2月2日. http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=7993 (環境省ホームページ)
○気象庁 (2007) IPCC第4次評価報告書第1作業部会報告書政策決定者向け要約(暫定版). http://www.data.kishou.go.jp/climate/cpdinfo/ipcc/ar4/ipcc_ar4_wg1.pdf (気象庁ホームページ)
○IPCC (2001) Climate Change 2001 Impacts, Adaptation and Vulnerability, 1032pp. http://www.ipcc.chより入手可能.

地球環境研究センターニュース2007年3月号(2007年3月30日発行)に掲載]