ココが知りたい温暖化

Q3温暖化対策の緊急性

!本稿に記載の内容は2013年10月時点での情報です

米国は京都議定書から離脱するなど、独自の温暖化対策をとってきました。自国経済に悪影響というだけでなく、当面研究開発に投資して対策技術で削減を図るということのようですが、それも合理的な考え方ではないですか。

亀山康子

亀山康子 地球環境研究センター 温暖化対策評価研究室 主任研究員 (現 社会環境システム研究センター 持続可能社会システム研究室長)

地球温暖化抑制のためには、革新的技術開発を進めつつも、今からできることを同時に実施していくことが重要です。

京都議定書の経緯と、近年の国際交渉

地球温暖化に対する国際的取り組みを目的としている京都議定書は、1997年に京都にて採択されました。京都議定書では先進国各国に対して、決められた量に温室効果ガスの排出量を抑制するよう規定しています。2008〜2012年の5年間(第一約束期間)では、日本は1990年の排出量と比べて6%、米国は7%削減することと規定されていました。

京都議定書は2005年2月に発効しましたが、米国の不参加や、2000年以降の新興国での排出量の急増などにより、京都議定書に参加している先進国の排出量だけを削減の対象としている京都議定書だけでは効果が限られると指摘されるようになりました。そこで、2011年に開催されたCOP17では、開催地の地名をとり「ダーバンプラットフォーム」という合意が成立し、すべての国が参加する新たな枠組みへの合意を目指して交渉を開始することになりました。

現在ある技術の早期普及と将来の技術革新の両方が必要

気候変動枠組条約では、第2条の中で、同条約の究極の目的として「気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準において大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させること」を提示しています。数多くの研究成果をふまえ、近年では、この目的となるべき水準として産業革命前からの気温上昇幅を2°C以内に抑えることが、長期目標として掲げられるようになりました。現在、すでに産業革命前から約0.8°C、地球の平均気温がすでに上昇していることから、長期目標達成のためには今後の上昇幅を1.2°C以内に抑えなければならないことになります。その目標達成は厳しいと言われています。

現在からできる限り温室効果ガス排出量を減らすためには、今すでに実証化されている技術を早期に普及させることと、将来さらなる削減に向けて、革新的技術の開発を急ぐことの両方が必要です。

現在の削減を怠る理由のひとつに、将来の革新的技術の到来を期待する声がないわけではありません。しかし、将来の技術開発だけに解決を委ねるデメリットとしては、(1) すべての技術が理想どおりに開発・普及される保証はなく、それが実現しなかった場合には、いかなる対策も手遅れになる水準まで温暖化が進行してしまう、(2) 温暖化に関しては、気温上昇の幅だけでなく上昇速度が問題となるので、排出量の急激な増加を抑えることが重要、(3) 技術が世界各国に普及するには20〜30年かかるため、将来時点で普及していることを目指すならば、結局今から政策を実施して社会を誘導していく必要がある、(4) 本当に将来の革新的技術の方が今からの対策より費用が安く済むのかという点で統一見解はなく、今支払わなくてよいというだけで「安い」と認識するのは適切でない、(5) 将来世代に大幅な排出削減を求めることは、現世代と将来世代との間の公平性という観点から問題がある、といった点が挙げられます。さらには、将来、今より多くの割合の人口が途上国に住んでいると予想されることから、将来世代に依存することは、先進国と途上国間の公平性の観点からも問題がある、という点が挙げられます。特に (1) に関しては、とりかえしのつかないことになるため、短期的視野で見た対策費用だけで対策の実施時期を判断するのは適切ではないといえます。

将来の「技術」—二酸化炭素回収・貯留(CCS)、水素エネルギー、再生可能エネルギー

ところで、このような議論の中に出てくる将来の排出量を大幅かつ急激に削減できる技術とは、一体どのようなものを想定しているのでしょうか。明確な定義のようなものはありませんが、二酸化炭素(CO2)を抽出して地中に閉じ込めてしまう「二酸化炭素回収・貯留」(Carbon dioxide Capture and Storage: CCS)技術や、CCSと組み合わせた水素エネルギー関連技術などが想定されている場合が多いようです。特にCCSについてはすでに現在においても米国などを中心に技術開発が進んできており、費用が下がれば現実的な対策として使えるようになるといわれています。太陽光、風力といった再生可能エネルギー技術は、今までもすでにあった技術でしたが、値段が高いことがこれまでは課題でした。近年、大量に導入が進んだことで、価格が大幅に下がったことが経験として認識されました。バイオマス関連技術も今後進展が見込まれています。他方、核融合などは現時点においては少なくとも今後20〜30年で実用化されることはないだろうというのが大方の予想のようです。

「今か将来か」から「今も将来も」へ

かつて2006年秋に英国にて公表されたスターン・レビューでは、地球温暖化による将来の影響の大きさと、対策に必要な費用とを経済学的に比較し、影響の大きさを強調した上で早期対策の必要性を論じました。翌年に公表された気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change: IPCC)第4次評価報告書では、過去3回公表された評価報告書と比べても温暖化の影響が強調されています。同報告書によれば、過去100年間で世界平均気温はすでに0.74°Cほど上昇していることが指摘されました。また、特に何もしなければ21世紀中にさらに数度上昇すると予想されています[注]。つまり、今からさらなる温暖化を抑制していくためには、地球全体の排出量を大幅に抑制していく必要があり、今か将来か、ではなく、今も将来も対策を実施しなければならないことを意味しています。今から減らせる部分は減らしつつ、同時に数十年後を見越した技術開発を今から進めていかなくてはならないということです。

米国では、地球温暖化問題について懐疑的な考えが今でも存在していますが、地球温暖化問題を真剣に考える人々の間では、最早、「今か将来か」という選択肢は聞かれません。今からできる対策を実施することが認識されています。ただし、ベストな対策が進むのが、気候変動枠組条約という多国間協議によるのかどうかについては、議論が残されています。特に、技術の開発、実用化、および普及は、民間部門の積極的な参画が必要であるため、多国間協議で詳細なルールを作るよりは、市場原理を活用して、二国間協力なども活用しつつ、進めていくほうが早いと考えられています。

IPCC第4次評価報告書第1作業部会報告書では、21世紀末の平均気温上昇に関して、「環境の保全と経済の発展が地球規模で両立する社会においては、約1.8°C(1.1〜2.9°C)である一方、化石エネルギー源を重視しつつ高い経済成長を実現する社会では約4.0°C(2.4〜6.4°C)」と予測しています。

さらにくわしく知りたい人のために

  • 「スターン・レビュー(概要版)」(2006) および「スターン・レビューに対するコメント」(2007) http://www-iam.nies.go.jp/aim/stern/index.htm
  • 小池勲夫編 (2006) 地球温暖化はどこまで解明されたか—日本の科学者の貢献と今後の展望. 丸善.
  • 亀山康子, 高村ゆかり編 (2011) 気候変動と国際協調—京都議定書と多国間協調の行方. 慈学社.

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