2013年9月号 [Vol.24 No.6] 通巻第274号 201309_274006

夏の大公開「来て、見て、納得、あなたもエコ博士」を開催しました

地球環境研究センター 地球環境データベース推進室 主任研究員
(国立環境研究所一般公開実行委員) 白井知子

2013年7月20日(土)に、恒例の国立環境研究所「夏の大公開」を開催しました。例年、暑い時期の開催のため、熱中症対策に気を遣うのですが、今年は、狙いすましたかのように涼しい一日となりました。天候に恵まれたことも幸いして、昨年度を上回る4,440名もの方々にお越しいただくことができました。地球温暖化研究棟では、子供から大人まで幅広い年齢層の方々に、地球温暖化について、わかりやすくお伝えするための企画に工夫をこらしました。特に今年は、会場参加型のパネルディスカッションを行ったり、展示でも来所者の皆様に実際に手で触れ目で確かめて頂くことに力を入れました。子供向け企画も人気で、途中で景品が足りなくなるほどでした。行った主な企画は以下の通りです。

photo. グリーンカーテン

地球環境センターの入り口で参加者を出迎えたグリーンカーテン。今年はゴーヤー、フウセンカズラの他に、パッションフルーツやニューメロンなど珍しい植物も実を付け始めており、興味深く立ち止まる人も多かったようです

「どーなってるの地球温暖化! ココが知りたい生パネル」
これまでの地球温暖化に関する講演会を発展させ、来場者の皆さんとより活発な議論が可能なパネルディスカッション形式を試みました。地球環境研究センターと社会環境システム研究センターからパネリスト4名とコーディネーター1名が参加しました。来場者には、〇×の意思表示をして頂く手作りのボードが配られ、パネリストが質問をした際、それを使って答えて頂きました。小学生からも積極的に質問が出るなど、会場が一体となって地球温暖化問題の「今」について考え、開始から終了後まで議論の絶えない印象的な企画となりました。詳細は地球環境研究センターニュース9月号で紹介します。
photo. パネルディスカッション

「どーなってるの地球温暖化! ココが知りたい生パネル」の会場風景。多くの皆様に議論に参加していただき、限られた時間の中で、研究者と来場者が一緒に考える良いきっかけとなりました

潜入! 実験室ツアー「世界の空気はここで測る」
普段は公開していない地球温暖化研究棟の内部(実験室、観測室、データ処理装置等)を特別に公開するラボツアーを毎年行っています。今年は、気体が赤外光を吸収する原理を利用した、地球大気中の温室効果ガス濃度を観測する「大型フーリエ変換分光計」観測装置をお見せしました。実際に、観測された光の信号の強弱が、ガラスセル中の温室効果ガスの濃度と対応していることを見て頂くことで、GOSATなどの衛星観測に応用されている分光リモートセンシング(遠隔計測)の原理を参加者に実感して頂きました。途中、GOSAT専用のデータ処理装置も紹介しましたが、立ち並ぶ計算機に思わず写真を撮る参加者も見られました。
photo. 実験室ツアー

「潜入! 実験室ツアー」の風景。光源である太陽からの光が大型フーリエ変換分光計(FTS)に誘導される光の流れを説明しているところ。この後、説明者の前の台の上のガラスセル中の温室効果ガス濃度を変えるとモニターに映し出される吸収スペクトル(光の信号)の形が変わってゆく様子を見て頂きました

地球環境モニタリング「海で測る」「空から測る」「宇宙から測る」「植物や土壌によるCO2の吸収・排出」
地球環境研究センターでは、地球温暖化をはじめとした地球環境問題に関するさまざまな分野において、国際的に連携しつつ継続的なモニタリングを実施しています。それらの対象は、大気・海洋、および生物圏などの地球環境全般に及んでおり、船舶を使って海から、航空機を使って空から、また人工衛星を使って宇宙から、と地上ステーション以外にもさまざまなプラットフォームを利用して、温室効果ガス濃度などの測定を行っています。特に今年は、平成25年度環境賞(優秀賞ならびに最高位の環境大臣賞)を受賞したことを記念して、航空機による大気観測プロジェクト「CONTRAIL」の展示をより充実させました。また、チャンバーを用いて、植物の光合成・呼吸による二酸化炭素(CO2)濃度の変化を見る実験もありました。展示にお立ち寄りくださった多くの方に、実際に測定機器やデータをご覧になって頂き、日々変化する地球環境の現状を把握するための観測の重要性を実感して頂けたと思います。
温暖化影響モニタリング「サンゴが知らせる海の温暖化」
海水温の上昇によって海の生物が変化しており、その実態の把握と、今後の水温上昇に対する応答予測が必要とされています。展示では、沢山の種類のサンゴの実物を手で持ったり、顕微鏡で構造を確認したりしながら、地球温暖化が生態系に及ぼす影響について考えて頂きました。
地球温暖化を予測する
温暖化予測チームでは、Flashを使った温暖化クイズと気候モデルの空間解像度向上を実感するレゴブロックの展示を行いました。温暖化クイズはネコのイラストがかわいい「おこさま編」とひねりのきいた問題が並んだ「おとな編」があり、順番待ちができるほどの人気でした。レゴブロックの展示は、ここ10年ほどで気候モデルの解像度がどれくらい向上したかを実感していただくためのもので、最新の約50km解像度と昔の300km解像度で、日本列島の見え方や標高分布が大きく変わり、より詳細な計算ができるようになっていることをお伝えできました。
日本とアジアのCO2「排出量はどれくらい?」
日本全体から排出される温室効果ガスを推計している温室効果ガスインベントリオフィス(GIO)では、世界の国々や日本で排出されるCO2排出量を、子供から大人までわかりやすいようにタワーで立体的に表現しました。多くの人が興味を持って立ち止まり、アメリカや中国のタワーの高さ、中国の近年の排出量の伸び等に驚いていました。また、日本の温室効果ガス排出量の今後についての質問もあり、関心の高さがうかがえました。
パネルで探検クイズ/地球環境ぱらぱらマンガ喫茶/挑戦! 折り紙手品!/紫外線かるた大会
今回のクイズのテーマは「空から測る!」。受付で解答用紙を受け取り、展示を回って、航空機観測に関するクイズに回答すると、CGERオリジナルハンカチがもらえる、ということで、訪れたほとんどの子供が参加してハンカチを獲得してくれました。また、「地球環境ぱらぱらマンガ喫茶」として、一室を子供用企画に開放し、ぱらぱらマンガや折り紙手品をじっくり楽しめるようにしました。折り紙手品は一瞬でパッと図柄が変わるのが子供たちに受けていました。その一角で、『太陽と紫外線かるた』の大会が行われ、子どもたちがカルタ取りをしながら紫外線の健康影響や防御方法について学んでいました。
自転車 de 発電
毎年、行列ができるほど人気のあるこの企画は、自転車をこぐエネルギーを電気のエネルギーに変えて、いろいろな電化製品を動かしてみる、というものです。大人用と子供用の自転車を用意して、多くの皆さんに楽しんでいただけました。日頃、何気なく使っている電化製品も、相当がんばって自転車を漕がなければ使えないことに改めて驚く人も少なくありませんでした。

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