2013年9月号 [Vol.24 No.6] 通巻第274号 201309_274007

どーなってるの地球温暖化! ココが知りたい生パネル —人類は地球温暖化を止めることができるのか—

地球環境研究センター 交流推進係 高度技能専門員 今井敦子

7月20日(土)に行われた国立環境研究所夏の大公開において、地球環境研究センターと社会環境システム研究センターは、地球温暖化問題に関するパネルディスカッションを開催しました。ここでは、その様子を紹介します。

向井(地球環境研究センター長):最近記録的な猛暑やゲリラ豪雨などが以前より多く報告されているにもかかわらず、東日本大震災以降、地球温暖化についての議論が聞かれなくなっています。しかし、二酸化炭素(CO2)の大気中濃度は確実に増加してきており、原子力や再生可能エネルギーの問題は地球温暖化問題と直結しています。この夏の公開イベントでは、一般の方々から事前に寄せられた地球温暖化問題に関する疑問点なども踏まえ、研究者が直接問いかけ、地球温暖化問題の今について考えていきたいので、会場の皆さまそしてパネラーの皆さま熱い議論をよろしくお願いします。

モデレータ:
江守正多(地球環境研究センター 気候変動リスク評価研究室長)
専門:地球温暖化リスク論
パネリスト:
  • 三枝信子(地球環境研究センター 副センター長)
    専門:地球環境観測
  • 小倉知夫(地球環境研究センター 気候モデリング・解析研究室 主任研究員)
    専門:気候変動予測
  • 亀山康子(社会環境システム研究センター 持続可能社会システム研究室長)
    専門:国際環境政策
  • 藤野純一(社会環境システム研究センター 持続可能社会システム研究室 主任研究員)
    専門:低炭素社会構築

江守:今から4、5年くらい前地球温暖化問題はブームでしたが、最近地球温暖化の話はあまり聞かれなくなりました。まず、会場のみなさんがこの問題をどういうふうに思っているのかをうかがってみたいと思います。

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【問1】
地球温暖化は科学的によくわかっていると思いますか?
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【問2】
地球温暖化が進むと人類にとって深刻な脅威になると思いますか?
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【問3】
人類は地球温暖化を止めることができると思いますか?
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今の答えを踏まえまして今日の客層がわかりました。次に4人のパネリストが自己紹介を兼ねたプレゼンテーションとクイズを行います。

三枝:国立環境研究所では、地球温暖化に関して非常に重要な役割を担っている温室効果ガス、とくにCO2の濃度やその収支を大気や海や森で観測しています。私は森林炭素収支モニタリングを担当しています。森林は、葉がついている夏季にCO2をたくさん吸収し、葉が枯れてしまう冬に放出するという季節的な変化を示します。

【クイズ1】
地球の表面の7割は海、3割は陸です。人間活動によって放出されたCO2の半分以上は森林が吸収してくれている?答え
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小倉:私は地球温暖化の予測について研究しています。地表面気温は、20世紀後半からはっきりと上昇しています。これは、ほとんどは人間活動による温室効果ガス増加からもたらされた可能性が非常に高い(IPCC第4次評価報告書, 2007年)と結論づけられています。大気海洋の内部変動等により温暖化の一時的な抑制・加速があり得るのですが、温室効果ガスの排出増加により今後も気温は上昇する見込みです。

【クイズ2】
つくばが将来2℃温暖化すると、いまの名古屋と同じくらいの平均気温になる?答え

亀山:国立環境研究所では温暖化を抑制するための対策について研究しています。CO2排出量は確実に上昇しています。気候変動枠組条約でどうやったら各国がCO2やその他の温室効果ガスを削減できるかを話し合っていますが、なかなか合意できません。理由の一つは衡平性です。世界各国に求める義務の間で釣り合いがとれていると納得できる合意ができるかが今後の課題です。

【クイズ3】
衡平性をはかる一つの指標が一人当たりの排出量です。日本の現在(2010年時点)の一人当たりのCO2排出量は、世界平均の2倍より少ない? 答え

藤野:私は2004年から低炭素社会シナリオづくりを進めています。私たちが使うエネルギーは、石炭、石油、天然ガス、原子力、再生可能エネルギーから供給されています。低炭素社会を実現するためには、(1) 省エネルギー、(2) 再生可能エネルギー、(3) 化石燃料の効率的な使用、(4) 安全な原子力の利用の4本の矢が重要です。

【クイズ4】
震災が起こる前の2010年度の一年間、日本で使われていたエネルギーの20%以上は原子力発電によって供給されていた? 答え

さらなる温暖化を遅らせて負の影響を減らすためには

江守:このパネルディスカッションを企画したときに、ウェブサイト等をとおして研究所内外の方から温暖化に関する質問を募集しました。いろいろな質問をいただき、ありがとうございました。ただ、本日はこの質問に一つひとつお答えしても会場のみなさんが満足するのかわからないので、別の方法で進めさせていただきます。最初に私がした質問のなかで、問3 人類は地球温暖化を止めることができると思いますか? について、とらえ方の違いはあると思いますが、会場のみなさんのお答えはほぼ半々でした。そこで、この問題についてパネリストはどう考えているかを聞いてみたいと思います。

三枝:人類が絶滅するほどの地球温暖化の影響は止めることができると信じたいですし、私はそのために研究を進めていると思っています。温暖化による負の影響はこれから止められないものもありますが、多くの人が生命の危機に遭うような事態を避けるためにある程度の試練を与えられていると思いますので、そこをどう解決するかです。

小倉:100〜200年という長い時間をかければ、社会的な変化もあり、技術的にも進化しますので、人類が滅亡するかどうかを心配するレベルまでいかずに止めることはできると思っています。しかし、10〜20年の間ではかなり難しいと思います。

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亀山:止められればいいと思います。難しいのは、こういうところに足を運んでくださらない方々、温暖化による脅威についてまだよく理解していない人たちに、メッセージを伝えていくことです。それが使命だと思っていますし、そういうことができないとかなり危険だと思います。

藤野:やろうと思えば今すぐでもひょっとしたら止められるかもしれません。必要最小限のエネルギー使用の生活まで戻す、または技術を使えばできると思います。つまり、やらないからできない。原子力の問題、熱中症、節電などをどのように取り組むかです。多くのできない理由ばかりを聞いていると、残念ながら悲観的にならざるを得ません。

江守:意思があればできるということですね。さきほどの質問はなるべくシンプルにしようと思ったため、わざとあいまいに聞きましたが、どれくらいで止まるかをはっきりしないと正確な話はできません。たとえば、産業革命前と比較して全球の平均気温が2℃を超えないようにするという考え方が温暖化の条約の交渉で合意されています。これまでに0.8℃上昇していますからあと1.2℃しかありません。このままいくと2℃はいつ頃超えるのでしょうか。

小倉:排出量を大きく削減しなければ今世紀中には超えてしまうでしょう。

江守:排出量をどれくらい削減できるかということですね。パネリストの話を聞いて、会場の方にご意見をうかがいたいと思います。

会場からの意見・質問は以下のとおり。

  • このまま地球温暖化が進むと「何か対策をとらないと」、と考えると思うので、止められる。
  • さまざまなことを進めているが、人間はせっぱ詰まらないとだめなので止められないのではないか。
  • 再生可能エネルギーは50〜100年後始動するかもしれないが、それまではシェールガス(地球環境豆知識参照)やCO2を出すエネルギーが使われるので止められない。
  • 日本人の気質として楽な方にいきたくなる傾向がある。地球温暖化はよほどの痛みがない限り、積極的な努力はしないだろう。
  • 国際社会一丸となって意識を変えていかないと温暖化は食い止められない。日本はエネルギー効率を上げる技術は世界の最先端を走っている。日本の技術を途上国に供与し、途上国の人たちに納得してもらえるような政策提案が必要。
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三つの課題:ライフスタイルの変革、技術開発、社会構造の変化

江守:三つの問題があるかと思います。ライフスタイルを変えることが重要だが、一方でそれは難しいというご意見がありました。もう一つは技術の問題。エネルギーは必要で化石燃料に頼らなければならないなら、技術開発しなければならない。三つ目として社会構造を大きく変えるということですが、どう変えたらいいでしょうか。このへんをうまく整理していただけますか。

藤野:先ほど4本の矢のお話をしましたが、現在は5本目の矢として、エネルギーから得られるサービスの満足度を見直す研究を進めています。そもそも、何のためにエネルギーが必要なのか。歩いて暮らせる街をつくる、地域のエネルギーをみんなで共有するという社会構造を変えるのは時間がかかります。また合意形成が必要です。大事なことは成功事例を作っていくことです。

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江守:技術については、現在、再生可能エネルギーよりシェールガスでいいのではということになっているように思えますが。

藤野:どの国もエネルギー問題を抱えており、米国は再生可能エネルギーもプッシュしていますが、シェールガスを利用するとそれ相当の温室効果ガスが排出されます。バランスの議論が大切です。

三枝:お話を聞いていて、私が止めることができるというレベルと多くの方が考えているレベルが違うのではと思い始めました。私は最初、人類に大変な被害が及ぶ前に止めることができると思いたいと言いました。現代の日本でみられる快適な生活を続けながら止めることができるということではありません。ここまで許せるという幅に大きな違いがあると考えた方がいいかもしれません。いま快適な生活を送っている人にとっては耐え難いことでも、そうでない人たちにはそれほど耐え難いことではないかもしれません。

地球温暖化を止めるために、これからは…

江守:危機感についてイメージするのは難しいですね。ここまでの議論をお聞きになって、お気持ちが変わった人もいるかもしれません。そこでもう一度先ほどの質問をしたいと思います。人類は地球温暖化を止めることができると思いますか?

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最後にパネリストのみなさんからコメントをお願いいたします。

藤野:できると思う人が減ったことに対して、私の発言がひょっとしたら影響したかなと思って反省しています。原子力発電所の事故が起こった福島県の会津では、住民自らが震災後、自然エネルギー研究会を設立して定例的に勉強しながら、たとえば小水力発電所が設置できないか取り組んでいます。一方で、もともとその地域は過疎の問題を抱えていました。両方を解決するために地域にある資源をもう一度見直そうという動きがあります。地域に根ざした活動に技術が組み合わされた事例が出てくればと思い、応援しています。そこに希望をもっています。

亀山:温暖化の脅威にについてお話ししたいと思います。アメリカではエネルギー産業が政治的な力をもっていて、なかなか温暖化問題に積極的になっていませんが、温暖化は環境問題ではなく安全保障問題を担当しているところで議論されています。温暖化で食料紛争になったり、地域戦争が起きたりします。あるいは海面上昇で小さな島国が沈んで、難民がアメリカに流入するのではないかという観点で安全保障問題として議論しています。日本では環境問題の一つとしてしか議論していません。もうちょっと違った観点で温暖化問題を議論することが必要ではないかと思っています。

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小倉:温暖化を止めることができるかについて意見が分かれるのは、温暖化がどれほど怖いかという共通見解がないためかも知れません。温暖化の怖さを感じやすいのは平均気温の上昇というより豪雨や干ばつなど、災害にかかわる極端な現象がどう変わるかという部分だと思います。今後の温暖化の研究のなかで重要になってくるのは、自然災害にかかわるような気象現象がどう変わるかを見積もることです。温暖化の影響についてよりはっきりしたイメージをもってもらえるよう、研究を進めることが大事だと思います。

三枝:世界中の人たちが目や耳となって変化を検出し、国を越えて意思疎通できるということを一つの希望と考えています。大きな痛みを抱えているところにみなが気づかないということがないように、それが第一歩かなと思っています。

江守:今回はなるべく会場のみなさんと一緒に考える形にすることを試みてみました。限られた時間で議論を深めることは難しかったですが、今後も改良しながら続けていきたいと思います。ありがとうございました。


【クイズ1の答え】
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【クイズ2の答え】
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【クイズ3の答え】
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【クイズ4の答え】
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(注)発電電力量ではありません。発電電力量における割合では原子力は30%くらいです。

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