2014年3月号 [Vol.24 No.12] 通巻第280号 201403_280010

【最近の研究成果】 北太平洋表層の二酸化炭素分布の年々変動が明らかに

  • 地球環境研究センター 特別研究員 安中さやか

海洋は地球上で最大の自然CO2吸収源であり、人為起源CO2の約3割に相当する毎年2.3GtC(ギガトン = 10億トン炭素換算CO2)程度が海洋に吸収されていると見積もられています。しかしながら、海洋中のCO2濃度は、海域や季節によって大きく変化しています。私たちは、前回の論文で、国立環境研究所が行っている海洋表層CO2分圧(地球環境豆知識参照)の測定結果から、2002年1月〜2008年12月の北太平洋表層全炭酸濃度[1]の広域マップを作成し、それを用いて、全炭酸濃度の季節変化の詳細を明らかにしました(安中さやか, 中岡慎一郎, 野尻幸宏「明らかになった北太平洋表層の二酸化炭素の分布 —海洋モニタリング事業の成果—」地球環境研究センターニュース2013年12月号参照)。そこで、今回の論文では、全炭酸濃度の年々変化を明らかにし、気候変動との関係を調べました。

その結果、北太平洋の水温場やその上空の大気場の年々変化として知られている北太平洋10年規模振動(Pacific Decadal Oscillation: PDO[2])に伴い、全炭酸濃度は、東西で逆符号の変化をすることが分かりました。図は、1年を通して、PDOが正であった2003〜2004年と、PDOが負であった2008年の全炭酸濃度分布、および、両者の差を示しています。PDOが正の時は、負の時に比べて、西部で濃度が高く、東部で低くなっていました。そして、これらの変化は、PDOに伴う、水平方向の流れや降水量、鉛直的な混合強度の変化で、大部分を説明することができました。

fig

2003〜2004年 (a) と2008年 (b)の全炭酸濃度分布と、その差 (c)

脚注

  1. 海水中に分子・イオンとして存在しているCO2の総量
  2. 太平洋各地で海水温や気圧の平均的状態が、10年以上の周期で変動する現象

本研究の論文情報

North Pacific dissolved inorganic carbon variations related to the Pacific Decadal Oscillation
著者: Yasunaka S., Nojiri Y., Nakaoka S., Ono T., Mukai H., Usui N.
掲載誌: Geophysical Research Letter, 2013, DOI:10.1002/2013GL058987.

目次:2014年3月号 [Vol.24 No.12] 通巻第280号

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