2014年4月号 [Vol.25 No.1] 通巻第281号 201404_281007

酒井広平講師による「検定試験問題を解いてみよう」シリーズ 4 IPCC —3R・低炭素社会検定より—

  • 地球環境研究センターニュース編集局

【連載】酒井広平講師による「検定試験問題を解いてみよう」シリーズ 一覧ページへ

3R・低炭素社会検定は、持続可能な社会の実現のため、3Rや低炭素社会に関する知識を活かして、実践行動を行う人を育てることを目的としています。【3R・低炭素社会検定 低炭素社会分野試験問題解説集「はしがき」より】

今回の出題は第5次評価報告書が発表されつつある「IPCC(気候変動に関する政府間パネル)」からです。国立環境研究所では複数の研究者がIPCCと関わっており、地球環境研究センターニュースでもIPCCと関連した多くの記事を扱っています。また、IPCC評価報告書の I) 科学的側面、II) 脆弱性・影響・適応策、III) 緩和策の各報告部会の執筆者も国立環境研究所に在籍しています。

問7気候変動に関する政府間パネル(IPCC)に関する記述として、最も不適切なものはどれか?

中級レベル

正答率 70%

  • IPCCは、国連環境計画と世界気象機関により設置された政府間パネルである。
  • IPCCは、京都議定書の約束達成を促すために気候変動枠組条約の下にある組織である。
  • IPCCは、アメリカの元副大統領アル・ゴアとともに、ノーベル平和賞を受賞した。
  • IPCCは、気候変動に関する科学研究から得られた知見を評価報告書としてまとめることがある。
ヒント
IPCCが、京都議定書の約束達成を促すことはありません。
答えと解説

答え: ②

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、1988年に、国連環境計画(UNEP)と世界気象機関(WMO)により設置された政府間機関で、事務局はジュネーブ(スイス)に置かれています。IPCCは、気候システムと気候変動の科学的局面、気候変動の悪影響や悪影響に対する脆弱性、温暖化抑制策など、気候変動に関する科学的知見の評価を行なっています。IPCCでは、5〜6年に一度、気候変動に関する科学研究から得られた包括的知見を評価報告書にまとめており、これまでに四つの評価報告書が作成されています(2012年時点)。この他にも、特定のテーマについて特別報告書も作成しています。こうした活動が評価され、2007年、IPCCはアメリカの元副大統領アル・ゴアとともに、ノーベル平和賞を受賞しました。

以上から選択肢①、③、④は正しい記述といえます。選択肢②については、IPCCの目的は、京都議定書の約束達成に特化したものではないため、誤りです。

問8IPCC評価報告書の説明として、最も不適切なものはどれか?

中級レベル

正答率 68%

  • 2007年に第4次評価報告書が発行された。
  • 第3次評価報告書以降の報告書は、I) 科学的側面、II) 脆弱性・影響・適応策、III) 緩和策の3部で構成されている。
  • 多くの国の多くの研究者が執筆に関わっている。
  • 気候変動枠組条約や京都議定書において各国が果たすべき役割も記載されている。
ヒント
IPCCは政治的に中立な立場をとります。
答えと解説

答え: ④

IPCCは、第1次評価報告書を1990年に、第2次評価報告書を1995年に、第3次評価報告書を2001年に、第4次評価報告書を2007年に発表しており、2013年現在は、第5次評価報告書の作成作業が進められているところです。多くの国の研究者が執筆を行っており、気候変動に関する科学研究の最新知見をまとめたもので、政治的に中立であり、特定の国際条約や国に対して政治的に助言を行うことはしておりません。また、IPCCは気候変動枠組条約や京都議定書からは独立した機関です。

関連した詳しい内容は、高橋潔「ココが知りたい地球温暖化:IPCC報告書とは?」​http://www.cger.nies.go.jp/ja/library/qa/14/14-2/qa_14-2-j.html を参照。

問92007年のIPCCの評価報告書で述べられている「温暖化による将来への影響」として、最も不適切なものはどれか?

中級レベル

正答率 83%

  • 乾燥・好天が続き、全地球的に、日照時間が長くなる。
  • 動植物の絶滅危惧種や絶滅種が増加する。
  • 沿岸域では海面上昇により、低地が水没する可能性がある。
  • 死亡率や伝染病危険地域が増加する。
ヒント
乾燥・好天が続く地域もありますが、大雨の頻度が増える地域もあります。
答えと解説

答え: ①

IPCC第4次評価報告書(2007年)において、温暖化の気温上昇による平均気温の上昇は、生態系へ影響を与え動植物の絶滅危惧種や絶滅種の増加、海面上昇による低地水没の可能性、衛生面が脆弱な地域での伝染病増加などが指摘されております。また、温暖化の気温上昇による乾燥化や干ばつ、砂漠化の進行は指摘されておりますが、好天が続き、日照時間が増加するといったことは地域的起こりえますが、全地球的に起こるといったことは特に指摘されておりません。

関連した詳しい内容は、原澤英夫「ココが知りたい地球温暖化:温暖化と極端な気象現象との関係」​http://www.cger.nies.go.jp/ja/library/qa/5/5-1/qa_5-1-j.html を参照。

  • *正答率は第5回3R・低炭素社会検定受験者のものです
  • 出典:3R・低炭素社会検定(http://www.3r-teitanso.jp)低炭素社会分野試験問題解説集

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