2015年4月号 [Vol.26 No.1] 通巻第293号 201504_293006
酒井広平講師による「検定試験問題を解いてみよう」シリーズ 16 酸性雨 —3R・低炭素社会検定より—
3R・低炭素社会検定は、持続可能な社会の実現のため、3Rや低炭素社会に関する知識を活かして、実践行動を行う人を育てることを目的としています。【3R・低炭素社会検定 低炭素社会分野試験問題解説集「はしがき」より】
検定試験問題から出題します。
問46酸性雨に関する記述として、最も不適切なものはどれか?
初級レベル
正答率 89%
- ①原因物質の一つに石炭の燃焼によって発生する硫黄酸化物がある
- ②酸性雨による土壌劣化が懸念されている
- ③pH値が7以上の雨水を酸性雨という
- ④酸性雨の原因物質は風に乗って、1,000km以上の遠方まで運ばれて影響を与えることがある
- ヒント
- 雨にCO2が溶けるだけでも中性ではなく酸性側のpH=5.6となります。さらにこれより酸性の度合いが強い場合が酸性雨となります。
- 答えと解説
-
答え: ③
大気中の二酸化炭素(CO2)が溶けるだけでpHは5.6を示しますので、これより値が小さい場合(酸性の度合いが強い場合)が酸性雨となります。日本でも工業地帯だけではなく、全国各地で酸性雨が観測されています。2009年度の全国観測地点の年平均はpH4.73となっています。
酸性雨問題の原因物質は窒素酸化物や硫黄酸化物です。主に工業化が進んだ先進国での大気汚染が原因となっておこってきましたが、公害防止設備をつけることでこうした国々での汚染物質の排出は大幅に低減されています。
また、酸性雨の原因物質は風に乗って、1,000km以上の遠方まで運ばれて影響を与えることがあります。日本で観測されている酸性雨については中国などから発生する大気汚染物質も影響しているとされており、対策には国際的な対応が必要となります。
- *正答率は第6回3R・低炭素社会検定受験者のものです
問47地球温暖化の影響として、最も不適切なものはどれか?
初級レベル
正答率 89%
- ①異常気象の増加
- ②熱帯低気圧の強度の上昇
- ③酸性雨のさらなる酸性化
- ④海水面上昇
- ヒント
- 地球温暖化と関連して、台風、ハリケーン、猛暑、干ばつ、大洪水、極地の氷融解などよく聞く話から判断すると……
- 答えと解説
-
答え: ③
地球温暖化の影響で、異常気象の増加、熱帯低気圧の強度の上昇、海水面の上昇などが指摘されております。一方、酸性雨は、硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)などの大気汚染物質が、光化学反応などにより酸性物質に変化し、これらの酸性物質が雨などに溶け込んで降ってくる現象をいいます。従って、温暖化の原因とされる温室効果ガス(CO2、CH4、N2O、Fガス類)の増加によって酸性雨がさらに酸性化される因果関係はみられません。
- *正答率は第5回3R・低炭素社会検定受験者のものです
- 出典:3R・低炭素社会検定(http://www.3r-teitanso.jp)低炭素社会分野試験問題解説集
酸性雨については、「これからの酸性雨調査の話をしよう —全国環境研協議会酸性雨広域大気汚染調査研究部会事務局を務めて—」でも紹介しています。