2017年8月号 [Vol.28 No.5] 通巻第320号 201708_320005
国立環境研究所一般公開「春の環境講座」を開催しました 4 パネル・展示3:JAXAから出張中! 国立環境研究所春の特別公開に出展してみて
2017年4月22日(土)に、科学技術週間に伴う国立環境研究所一般公開として「春の環境講座」を開催しました。本稿では、JAXAと地球環境研究センターが行った人工衛星による温室効果ガス観測に関する企画について報告します。なお、地球環境観測の展示・紹介、発電量表示システムを備えた自転車発電体験につきましては、地球環境研究センターニュース7月号を参照してください。
4月22日土曜日、私たちは平日いつも着ている「JAXA」と刺繍された作業着を羽織って、つくば市の学園西大通り、洞峰公園を南に少し進んで右手にある国立環境研究所に二人並んで着席していました。背後には「JAXAから出張中! 宇宙と温暖化なんでも相談室」と書かれたパネルが掲示されています。
同じ研究開発組織でも宇宙開発と自然環境。分野が違います。それなのになぜJAXAの人間が国立環境研究所に?
2009年1月に種子島宇宙センターからロケットに乗せて打ち上げた「いぶき」という愛称の人工衛星があります。
「いぶき」は日本が世界に先駆けて開発した、宇宙から地球の温室効果ガスを観測することに特化した人工衛星で、2009年から今日に至るまで観測を続けています。
「いぶき」はJAXAだけで開発したのではなく、JAXA、国立環境研究所、環境省の三者で協力して開発しました。以来、研究開発にとどまらず、様々な活動でパートナーとしてお互いに協力するようになりました。今回もそのよしみでお邪魔したというわけです。
「なんでも相談室」は私たちにとって初めての試みでしたが、おかげさまで老若男女多くの方々に立ち寄って頂き、たくさんの質問を頂きました。「人工衛星で宇宙から観測するといいことがあるの?」「宇宙からどうやって観測するの?」「なんで二酸化炭素は季節によって濃くなったり薄くなったりするの?」「メタンと温暖化ってどんな関係があるの?」「メタンが牛のげっぷから出るってほんと?」「温暖化はどうすれば止められるの?」「何か自分にできることはある?」
気づいたことが2つあります。1つは、好奇心、そして知らなかったことを知る喜びには老若男女関係がないこと。
もう1つは「教える」つもりで出張してきた私たちがその実、多くを「教えられた」ことです。
すなわち、来場頂いた皆さんが日常生活の中で温暖化について何が気になり、何が疑問で、何が不安で、どんな変化を感じているのか。皆さんと直接お話しするまで分かっていなかったように思います。
立ち返ってみれば、私たちの研究開発は何のためにあるのか。それはまだ分かっていないことを解き明かしたいという思いを叶えるためであるとともに、人々の生活にわずかでも「いいこと」が増えればという思いからです。
皆さんの疑問に答えること、不安を少しでも減らすこと、そしてその先、皆さんの生活にとっていいことを増やせられたら、と改めて思う一日でした。