2017年8月号 [Vol.28 No.5] 通巻第320号 201708_320007
谷本浩志室長が第2回地球惑星科学振興西田賞を受賞しました
研究業績
対流圏オゾンおよび海洋性硫酸エアロゾルの生成過程の研究
選定理由
対流圏オゾンは温室効果気体であり、生物に悪影響を及ぼすため、長期変動とその要因解明が長年の課題であった。谷本氏は、重要なオゾンの前駆物質である有機硝酸や有機炭素の高感度測定器を開発し、アジアでの分布を測定し、オゾン生成過程の理解に貢献した。またオゾンデータの解析から、東アジアの自由対流圏でオゾンが大きく増加していることを見出し、オゾン前駆物質の増加がその主要因である観測的証拠を示し、化学輸送モデルの改善点を指摘した。海洋域での硫酸エアロゾルは、雲量に影響を及ぼす雲凝結核の重要な生成源である。その前駆気体である硫化ジメチル(DMS)の高時間分解能測定器を開発し、西太平洋域でのDMSの高度分布から、海洋から大気へのフラックスを測定した。この観測から、DMS放出量推定に純群集生産データが有用であることを指摘し、貧酸素条件下で植物プランクトンによるDMSの生成・放出が促進されるチャンネルを発見した。以上の功績が評価され、日本地球惑星科学連合より第2回地球惑星科学振興西田賞が贈られた。