2018年7月号 [Vol.29 No.4] 通巻第331号 201807_331006
国立環境研究所一般公開「春の環境講座」を開催しました
1. はじめに
2018年4月21日(土)に、科学技術週間に伴う国立環境研究所一般公開として「春の環境講座」を開催しました。春の環境講座における地球環境研究センターの催事はこれまで地球温暖化研究棟で行ってきましたが、催事の集約を図る目的で、今回初めて、研究本館Iで実施しました。催事はすべて新作または従来の大幅バージョンアップです。多くの来場者にご覧いただき、内容の濃い活動紹介ができたと考えております。
センターの催事は、(1) 人工衛星による温室効果ガス観測、(2) 地球環境モニタリング(空から民間航空機を利用して測る)、(3) 北極域では今、(4) メタンを知ろう、測ろう!、(5) パッションフルーツでグリーンカーテン(里親募集)、(6) 自転車de発電(自転車発電でLEDライトは何個つけられる?)、そして (7) 対話企画 地球温暖化の疑問をなんでも語りましょう!の7つです。27名の職員がこれら催事に対応いたしました。
2. 催事の内容
まず、(1)「人工衛星による温室効果ガス観測」では、6名の職員が模型や壁に大きく投影された衛星観測に基づく二酸化炭素(CO2)濃度シミュレーション結果などをご説明しました。
(2)「地球環境モニタリング(空から民間航空機を利用して測る)」では、2名の研究者が民間旅客機に搭載する小型観測装置を前に、これまで得られた膨大なデータが地球温暖化の将来予測に欠かせない研究に世界で役立てられていることをご説明しました。来場者からは「こんな取り組みがあったんですね」と言っていただくことが多く、「今日が来るのをずっと楽しみにしていました」という方もおられました。高等学校の先生とは「次は生徒を連れてきます」とのお約束?ができました。
(3)「北極域では今」は、今回初めて一般公開に登場した北極を拠点にした研究の紹介です。そもそも北極の環境はどうなっているのか? 大気汚染物質でもあり温暖化物質でもあるブラックカーボンって何なのか? 5名の職員が連携して、最新の研究成果を紹介しました。急速な温暖化が進む北極域において、ブラックカーボン粒子がなぜ注目されているのか、そしてそのブラックカーボンがどこからどのようにして北極に運ばれてくるのかを数値シミュレーションに基づき解説しました。中高生を含むたくさんの方々に来ていただき、普段馴染みの薄い北極域の環境問題が、私たちの住むアジアともかかわりがあることを知っていただく良い機会になったと思います。
(4)「メタンを知ろう、測ろう!」は今回初となる催事です。人間が排出する温室効果ガスのうちでCO2の次に排出量の大きいメタンがどのような物質なのかは意外に知られていません。ここでは最新鋭の濃度測定装置を使って人の呼気中に含まれるCO2とメタンの濃度を測定する体験をしてもらった後で、6名の職員がメタンの基礎的な情報を皆様にご説明しました。来場者からは、人間の腸内で(微生物によって)メタンが作られているだけでなく、その量の個人差が大きいことに驚いたなどの感想が聞かれました。また、水田や家畜が東アジアの大きなメタン放出源になっているという点にも多くの方に興味をもっていただけました。
(6)「自転車de発電(自転車発電でLEDライトは何個つけられる?)」では、これまでと少しやり方を変えました。この企画は、自転車をこぐ力を電気エネルギーに変え、いろいろな電化製品を動かして、その抵抗から電気の大切さを理解しようと試みるものですが、今回新たに省エネルギー効果が高いLED電球に着目した体験企画を設定しました。
具体的には、消費電力7.8WのLED電球を7行×7列の合計49個並べて順に点灯し、周辺をどれだけ明るくできるかを実験・体験できるようにしました(写真5-1, 2参照)。
実際に発電してみると相当に明るくできますが、これは消費電力の小さいLEDライトだからであって、従来型の白熱灯では非常に難しいのです。さらにスイッチ一つでつけられるあかりも、電力消費をできるだけ少なくすることが重要であることを体験していただきました。
そして、(7)「対話企画 地球温暖化の疑問をなんでも語りましょう!」では、江守正多副センター長と岩﨑茜サイエンスコミュニケータがぶっつけ本番で地球温暖化に関する疑問に回答・解説を行いました。その詳細は別に報告いたしますが、タイトル通りに「対話」が促進されるイベントとなりました。
3. おわりに
会場を変えて臨んだ今回の春の一般公開は、昨年よりもかなり多い来場者を得て、盛況のうちに終えることができました。夏の大公開は7月21日(土)開催です。さらなる新企画を準備し、規模も一回り大きくして皆様のお越しをお待ちしております。どうぞお楽しみに。