2017年9月号 [Vol.28 No.6] 通巻第321号 201709_321001

進展を続ける宇宙からの観測 —第13回宇宙からの温室効果ガス観測に関する国際ワークショップ(IWGGMS-13)参加報告—

  • 地球環境研究センター 衛星観測研究室/衛星観測センター 主任研究員 野田響

1. はじめに

2017年6月6日から8日にかけて、第13回宇宙からの温室効果ガス観測に関する国際ワークショップ(13th International Workshop on Greenhouse Gas Measurements from Space: IWGGMS-13)がフィンランドのヘルシンキ市内中心部にあるヘルシンキ大学講堂において開催された。このワークショップは、2004年4月に、東京において、日本の温室効果ガス観測技術衛星GOSAT(Greenhouse gases Observing SATellite)と、アメリカの軌道上炭素観測衛星OCO(Orbiting Carbon Observatory)の関係者間で人工衛星による温室効果ガスの観測技術等の情報交換を目的として行われた会議を第1回として、その後はヨーロッパや中国などからの関連したプロジェクトの研究者も参加して規模を拡大しながら年に1回程度の頻度で開催されてきた。第13回となる今回は、フィンランド気象研究所(Finnish Meteorological Institute、以下FMI)の主催で行われた。今回のワークショップでは、日本、アメリカ、開催国であるフィンランドの他、フランスやオランダ、ドイツ、中国などから計168名が参加した。国立環境研究所(以下、国環研)からは、地球環境研究センターの三枝副センター長や松永室長(衛星観測センター長)を含む11名が参加した。

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写真1IWGGMS-13の会場となったヘルシンキ大学講堂

2. ワークショップの概要

ワークショップはFMIの上部組織であるフィンランドの運輸通信省(Ministry of Traffic and Communications)のK. Pietikäinen氏のオープニング挨拶と、ワークショップ主催者であるJ. Tamminen氏(FMI)のスピーチで始まった。

ワークショップでは49件の口頭発表と74件のポスター発表が (1) 現行および近い将来の衛星ミッション、(2) リトリーバル、(3) 検証、(4) フラックスのインバースモデル、(5) 炭素循環プロセス研究、(6) 太陽光誘導クロロフィル蛍光研究、(7) 将来衛星計画、の計7セッションに分けて行われた。本稿では、この中で (1) の他、筆者の専門である (6)、そしてこの分野の今後の方向を示す (7) を中心に扱う。

セッション (1) では、最初にD. Crisp氏(NASA JPL、アメリカ)がGOSAT(2009年1月打ち上げ、現在運用中)とOCO-2(2014年7月打ち上げ、現在運用中)との間でこれまで続けられてきた校正・検証を始めとする協力関係とその成果について講演し、続いて松永はGOSATの観測およびそれに伴う研究成果、さらに2018年度に打ち上げを予定している後継機GOSAT-2のスペック等の紹介を行った。現在、温室効果ガスを観測する衛星としては、GOSATおよびOCO-2が代表的であり、本ワークショップの全体を通して、これら2衛星に関連した研究や、それらの観測データを利用した研究の発表がほとんどであった。しかし、セッション (1) では、これらのミッション以外にもヨーロッパや中国、さらには民間企業による衛星による温室効果ガス観測の取り組みについて紹介された。J. Landgraf氏(SRON、オランダ)は2017年9月打ち上げを予定しているメタン(CH4)観測を目的の1つとするEC(欧州委員会)のSentinel 5 precursorについて、計画と衛星の詳細についての紹介を行った。O.B.A. Durak氏(GHGSat Inc.、カナダ)は二酸化炭素(CO2)およびCH4を観測する民間商用衛星GHGSat(2016年6月打ち上げ)についての発表を行った。また、2016年12月に打ち上げられた中国のCO2観測衛星であるTanSatについては、招待講演者であるY. Liu氏(Institute of Atmospheric Physics、中国)がその最初の観測結果について講演を行った。さらにY. M. BiおよびZ. Yangの両氏(いずれもNational Satellite Meteorological Center、中国)がそれぞれTanSatの較正やセンサーの詳細などについて発表した。TanSatについての計3件の口頭発表から、この分野における中国の意気込みが伝わった。

3. 太陽光誘導クロロフィル蛍光

2011年にGOSATのセンサーTANSO-FTSの観測値から陸域植生が光合成の際に発するクロロフィル蛍光(Solar-Induced chlorophyll fluorescence: SIF)を推定できることが報告されて以来(Frankenberg et al., 2011 とJoiner et al., 2011)、GOSATやOCO-2を始めとする温室効果ガス観測衛星データを利用したSIF研究が盛んに行われるようになった。IWGGMS-13においても、インバースモデルについてのセッション (4) でJ. Liu 氏(NASA、アメリカ)がGOSAT観測値から算出したSIFデータを利用して世界の熱帯雨林の純一次生産量と呼吸量を推定し、大規模な2015年のエルニーニョが与えた影響についての研究結果を示した。さらにSIF研究に焦点をあてたセッション (6) が最終日となる3日目に行われた。セッション (6) では3件の口頭発表および3件のポスター発表がなされた。これらの発表の中でも、A.J. Norton氏とP.J. Rayner氏(メルボルン大学、オーストラリア)はSIFから生態系プロセスベースモデルBETHY-SCOPEを用いて、陸域生態系の純一次生産量の推定について口頭発表をし、SIFが生態系の炭素循環研究において、より深く理解されて使われるようになりつつあることを示した。

4. 将来衛星ミッションについて

ワークショップの最後を飾るセッション (7) では、将来の衛星計画について8件の口頭発表が行われた。このセッションでは最初の発表として、A. Eldering氏(NASA、アメリカ)からOCO-3についての講演が行われた。OCO-3は、現行のOCO-2の後継ミッションとして、国際宇宙ステーション(ISS)にOCO-2と同様のセンサーを2018年に設置する計画として進められていた。しかし、2017年5月にトランプ大統領が議会に提出した2018会計年度予算教書では、OCO-3は中止するミッションとして挙げられた。Eldering氏は、講演の最初のスライドでアメリカ議会の予算確定までの各段階についての説明を行い、現時点の段階ではOCO-3中止はまだ決定事項ではなく、実現のために努力を続けていくことを強調した上で、ISSに取り付け予定の完成したセンサーの写真などを見せながらOCO-3ミッションの準備が順調に進んでいることを説明した。一方、NASAでは、OCO-3とは別のミッションとして、静止軌道から北米および南米地域について大気中のCO2、CH4、一酸化炭素(CO)、そしてSIFを観測するGeoCarb衛星を2022年に打ち上げる計画を進めている。このセッションでは、GeoCarbミッションの全体像についてB.M. Moore氏(オクラホマ大学、アメリカ)が、CO観測についてはP.J. Rayner氏(メルボルン大学、オーストラリア)がそれぞれ講演を行った。なお、GoeCarbについてはIWGGMS-13の翌日となる6月9日にFMIにおいて、IWGGMS-13参加者のための情報公開の場が設けられた。

5. 最後に

本ワークショップは3日間に渡り、非常に熱心で活発な議論が行われた。衛星による温室効果ガス観測は、ガスのサンプリング観測やフラックス観測などの地上観測などに比べると比較的新しい分野である。しかし、今回のワークショップでは様々な研究成果について発表され、さらに複数の新たな衛星ミッションの計画が紹介されるなど、GOSATの打ち上げから8年を迎えた現在、この分野において衛星観測の有用性が広く認識されてきたことを感じさせた。本ワークショップのプログラムや発表スライドは、http://iwggms13.fmi.fi/において公開されている。興味のある方は、ぜひこちらのサイトを参照していただきたい。なお本会議の最後に、次回となるIWGGMS-14は2018年5月にカナダのトロントでの開催が予定されていることが紹介された。

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写真2口頭発表を行う松永室長。会場では熱心な議論が行われた

*IWGGMSに関するこれまでの記事は以下からご覧いただけます。

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