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中核研究プロジェクト3 気候・影響・土地利用モデルの統合による地球温暖化リスクの評価

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〔平成22年度の成果の紹介〕

温暖化影響と生態系サービスの変化

地球温暖化によって多くの陸域生態系(森林・草原など)にさまざまな影響が生じることが予想されます。それは野生生物だけでなく、生態系の供給・調節などに関わる公益的機能(生態系サービス)を変化させることで、人間社会にも影響がもたらされます。私たちは、陸域生態系をシミュレートするモデル(VISITモデル)を開発し、過去から将来の地球環境変動が生態系とそのサービスに与える影響を研究しています。気候変動に伴う環境ストレスや人間による土地利用変化は、生態系の構造や多様性を変化させますが、それによる生態系サービスの損失はより大きな将来のリスク要因となり得ることが示されています。

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温暖化影響と生態系サービスの変化(図)

陸域生態系の「気候調節サービス」は、温室効果ガス(二酸化炭素・メタン・亜酸化窒素)の収支で決まります。VISITモデルを用いて、過去110年間の大気・気候の変化と土地利用変化によって、気候調節サービスがどう変化してきたかを推定しました。現在の温室効果ガス収支は、陸上に非常に不均一に分布しており(A)、場所によってはメタンや亜酸化窒素が重要であることがわかりました(B)。また、1950年代以降の急激な大気二酸化炭素増加は、植物の光合成を活発化させて、生態系への温室効果ガス吸収を増加させてきたことがわかりました(C)。その一方で、耕作地の拡大によりメタンや亜酸化窒素の放出も増加しており、今後この正味の収支がどう変わっていくかを注意深く見守る必要があります。

気候モデルの将来気候変化予測に関する多変量解析法を用いた制約

複数の気候モデルによる将来気候変化予測は全球的な気温上昇を共通して示しますが、気温上昇量やその空間分布特性など、細かい点では異なるという不確実性があります。その不確実性を低減するため、気候モデルの結果を評価し、将来予測値を制約することが必要です。われわれは、複数の気候モデルの結果を用いた多変量解析の結果と20世紀後半の観測データを利用し、将来気温変化を推定しました。この推定結果は、複数のモデルを等価平均した将来気温変化予測よりも、大きな気温上昇が将来に起こる可能性を示唆します。

気候モデルの再現性と将来予測の統計的関係を考慮した将来気温変化の推定値
気候モデルの再現性と将来予測の統計的関係を考慮した将来気温変化の推定値

図の等値線は、複数の気候モデルの結果の統計的関係と20世紀後半の観測データを用いて推定した気温変化を示し、カラーによって示される値は推定した気温変化とモデル平均気温変化の差を示す。ただし、カラーは差が95%の統計的有意性のあるところのみを示す。単位はK。北半球高緯度地域を中心として全球的に、今回推定された気温変化がモデル平均気温変化よりも高い上昇を示している。

気候シナリオの不確実性を考慮した世界のトウモロコシ生産性変化の予測

気候予測情報の不確実性によるトウモロコシの生産性変化予測への影響を評価するため、全球規模の作物生産モデルに複数の気候モデルによる将来予測情報を入力し、トウモロコシの生産性変化の予測を行いました。
将来の温室効果ガス排出が大きいシナリオ(SRES-A2・多元化社会)に従う場合、多くの予測でトウモロコシ生産量上位13カ国での2080年代までの平均トウモロコシ生産性の変化は大きく低下すると予測されます。ただし、中には大きな変化がないまたは、若干増が予測されるという不確実性がありました。また、21世紀後半になるほど不確実性幅が大きくなることも示されました。

SRES A2シナリオに基づく14のGCMによるトウモロコシの平均生産性変化の不確実性
SRES A2シナリオに基づく14のGCMによるトウモロコシの平均生産性変化の不確実性

グラフはSRES A2シナリオに基づく14の気候モデルの気候予測情報を前提とした、全球のトウモロコシ生産性の変化率。
1990 年代を基準に平均で、2020 年代は−6.8%(不確実性幅:−26%~12%)、2050年代は−12.4%(不確実性幅:−33%~15%)、2080年代は−22%(不確実性幅:−52%~10%)と予測されました。

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