地球温暖化研究プログラムトップページ > 中核研究プロジェクト4トップページ > 平成21年度の成果の紹介
日本で2050年CO2排出量を70%削減した低炭素社会を実現するためには、技術や制度・政策をどのタイミングで実施すればよいのでしょうか。また、そのためにはどの程度の額をどの分野に投資することが必要なのでしょうか。その答えを探すため、報告書「低炭素社会に向けた道筋検討」では、低炭素社会を実現するために要する総費用が最も少ない道筋はどのようなものかを、シミュレーションモデルを用いて定量的に検討しました。 コスト効率的に低炭素社会を実現するためには、エ ネルギー効率を高めるだけではなく、低炭素型技術に関する市場を拡大しその対策費用を安くすることが非常に重要です。特に、民生部門の高効率機器や高断熱住宅、運輸部門の次世代自動車など、エネルギー効率を改善する余地が大きく、コストの低減が見込める対策に早期に集中的な投資をすることが肝要といえます。
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2009年末の気候変動枠組条約第15回締約国会議(COP15)での合意達成に向けて、今後の国際的取組のあり方に関する国際交渉が実施されてきました。しかし、COP15では、政治合意であるコペンハーゲン合意が了承されたにとどまり、交渉自体は2010年のCOP16まで継続となりました。国際合意達成のためには、主要国の国内情勢を横断的に分析し、これらの国にとって受け入れ可能な国際制度案が提示される必要があります。本研究では、交渉に影響を及ぼす主要国(米国、欧州、中国・インド、ロシア)の国内政策に関する比較分析を実施しています。
気候変動に関する将来枠組みの構築に向けた議論において、わが国の2020年の温室効果ガス削減目標について、日本経済モデルを用いて日本経済への影響を分析しました。限界削減費用に相当する額を炭素税として課し、その税収を一括して家計に戻す既存のシナリオ(いわゆる定額給付金に準じた方式)に加えて、税収を温暖化対策の支援に充てるシナリオ(低炭素投資促進シナリオ)に基づく分析を行いました。その結果、低炭素投資促進シナリオでは、家計一括返還シナリオと比べて必要となる税率が低く、国民負担をできる限り少なく抑えつつ日本が2020年に1990年比で25%削減という目標を達成しうることを示しました。