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もっと知ろう!温暖化

新聞やテレビで温暖化のことを目にする機会が急に増えました。温暖化は確かに大事な問題なのだと思いますが、このような騒ぎ方では一時の流行に終わってしまうのではないでしょうか。
社会環境システム研究領域 環境計画研究室 主任研究員 青柳 みどり
温暖化対策を進めるためには、産業部門だけでなく家庭部門、つまり国民一人ひとりの行動が必要となっています。「騒ぎ」のように見えますが、皆さんに温暖化問題を知ってもらい、対策行動をとっていただくには、温暖化の原因・影響・対策などについてさまざまな手段でお知らせすることが必要です。それは、温暖化問題について、誤解や知られていないことがとても多いためです。また、このようなキャンペーンを続けることによって、一時の流行では終わらせないようにすることができるでしょう。

温暖化対策の進展

日本国内のいくつかの自治体では20~40年先を目標に、二酸化炭素排出量を現在(もしくは1990年の)レベルから大幅な削減をする計画を策定し始めています。たとえば、柏市(2030年度に温室効果ガスを2000年度比-25%以上)、千代田区(2020年度に二酸化炭素を90年度比-25%)、横浜市(2050年に市民一人当たり温室効果ガスを2004年比-60%以上)、広島市(2050年度に温室効果ガスを90年度比-70%)等です。これはEU諸国をはじめ、世界的な動きでもあります。これらの計画を実現するためには、産業部門だけでなく家庭部門、つまり国民一人ひとりの行動が必要となっています(注1)。国民一人ひとりが有効な対策行動をとれるようにするためには、温暖化の原因・影響・対策などについて知ってもらうことが必要です。

あまりにも知られていない地球温暖化問題

筆者らが実施した無作為抽出による全国成人を対象とした世論調査(注2)では、「最近、地球上の気候が変化してきている」と感じる人々は95%にも達していますが、その原因や影響については、誤解している人が実に多いのが現状であることがわかりました。たとえば、「大気汚染」「オゾン層の破壊」や、「石油や石炭が大気に放出されること」などが原因と思っている人がとても多いのです[図1](注3)。

[図1]地球上の気候が変化してきている原因として考えるもの

[図1]地球上の気候が変化してきている原因として考えるもの
注)このデータは2008年1月、筆者作成(地球環境研究総合推進費H-052で実施)。全国2000名の成人男女を対象とした専門調査員による個人面接調査の結果。有効回答数1301名。専門調査員が、選択肢の書いてあるリストを示して設問と選択肢を読み上げ、回答者にリストの中から答えてもらうという方法をとった。

温暖化のメカニズムの理解

どんな間違いが多いのかについて、一般の人に座談会形式で聞いた時(注4)の結果を挙げましょう。図1で、地球上の気候が変化してきている原因が「オゾン層の破壊」とする人が50.1%にも上っています。これについては、「フロンガスによってオゾン層が破壊されると、地球上に到達する太陽光が強く(多く)なって、地球が今まで以上に暖まる」ということを原因としてあげる人が男女・年代を問わず多くみられました。しかし、現在の知見によれば、その効果はとても小さくて、温暖化の傾向を説明できるほどではないのです(注5)。

温暖化対策についての理解

温暖化対策についても同様に知られていないことが多くあります。実は、1980年代後半から国際的にさまざまな動きがあったにもかかわらず、日本国内ではほとんどマスメディアによる報道がなかったために、現在の国際交渉に関わるさまざまな組織や約束事があまり知られていません。たとえば、京都議定書や京都議定書に関する議論からのアメリカの離脱といったトピック的に日本国内で大きく報道された事実についての認知度は高いのですが、京都議定書の内容やその後の日本国内で整備された法律のことなどについての認知度は低いのです。また、一連の温暖化についての科学的なとりまとめ役となっているIPCCの存在やその役割、成果などについてもほとんど知られていません(注6)。

部門別の温室効果ガス排出量割合についても同様です。筆者らの座談会形式での聞き取りでは、「温暖化の原因のほとんどは企業、工場にあるのではないか。一般の家庭で対策をする必要があるのだろうか」との質問がありました。確かに、部門別の二酸化炭素排出量割合をみると、エネルギー産業や製造業が圧倒的に多いのですが、家庭部門からの排出も年々増加しています(注7)。さらに、家庭部門での需要の変化が製造業の対策に大きな影響を与えるということもあります。家庭部門で環境を考えた購買行動をすることにより、今以上に企業も環境を配慮した製品を生産するようになり、社会全体での二酸化炭素排出削減につながります(注8)。

「騒ぎ」に終わらせないために

今の私たちの生活をそのまま続けていったらどうなるでしょうか。答えは、「将来の人たちに限られた選択肢しか残せない可能性が高くなります」(注9)ということになります。ならば、私たちのニーズを満たしながら、将来の人たちにも必要なニーズを満たす可能性を残すにはどうしたらいいのでしょうか。その一つの方法は、私たちが今の生活を見直して「より効率的な社会」を築いていくことです。具体的には、地域での住宅や各種施設の配置や移動手段のデザイン、住宅における基本設備のエネルギー効率の上昇などがあります(注10)。

しかし、それ以前に大きな問題もあります。一般の人々に座談会形式で話を聞いたときに、意外なことがわかりました。「温暖化について興味を持って調べようとするほど、温暖化否定の話に突き当たる」ということです。書店では、「温暖化などは嘘だ」という本が、来店した人が手に取りやすい位置に並べられています。図書館でも検索するとこのような本が多く出てきます。インターネットで調べると、さまざまな人がお互いに矛盾する事柄を書き込んでいます。つまり、興味を持って調べようとした人が、最新の科学的見解に到達しにくい状況になっているのです。

現在、環境省では「チーム・マイナス6%」のようなキャンペーンを行っていますが、このようなキャンペーンを続けることによって、「温暖化」についての関心を一時の流行に終わらせないことが可能でしょう。同時に、温暖化問題についての科学を解明する研究者は自分たちの研究成果をどう世の中に伝えていくのか、きちんと戦略をたてて臨む必要があります。「騒ぎ」としてとらえられるようなアプローチが果たして有効なのか、再考の余地はあるでしょう。

(注1)これらのもととなる世界全体および日本全体の目標設定に関しては、「ココが知りたい温暖化」「二酸化炭素の削減と生活の質」「2050年までに排出量半減とは?」などをご参照ください。

(注2)筆者が課題代表者として実施した環境省による地球環境研究総合推進費(H-052)の2007年1月の成果です。

(注3)同上の2008年1月の調査結果です。全国20歳以上の無作為抽出した成人男女を対象に専門の調査員による個人面接調査にて実施しました。有効回答数1,310(有効回答率65.1%)です。

(注4)筆者が課題代表者の(独)科学技術振興機構社会技術開発センターによる研究開発プロジェクト「気候変動問題についての市民の理解と対応についての実証的研究」にて実施しました。

(注5)「ココが知りたい温暖化」「オゾン層破壊が温暖化の原因?」をご参照ください。

(注6)「ココが知りたい温暖化」「IPCC報告書とは?」「国際会議-日本の主張は誰が決める?」「排出権取引成功のカギと適切な国内対策」「温暖化対策の緊急性」「途上国の温暖化対策は?」「排出削減目標を達成できない場合」等をご参照ください。

(注7)環境省サイトの「地球温暖化国内対策」( http://www.env.go.jp/earth/ ondanka/domestic.html )の各項をご参照ください。

(注8)現在、二酸化炭素排出量の少ない製品であることを示す環境ラベルなどで消費者の選択を促すような仕組みが考えられており、イギリスなどでは大手小売業で実施されはじめました。日本でも検討が開始されています。

(注9)これは、ブルントラント報告『Our Common Future』の「持続可能性」についての定義を裏返した表現です。ブルントラント報告『Our Common Future』においては、「将来の世代のニーズを満たす能力を損なうことなく、今日の世代のニーズを満たすような開発」と定義されています。

(注10)「ココが知りたい温暖化」「二酸化炭素の削減と生活の質」「車のかしこい使い方」の項や、財団法人省エネルギーセンターのサイト( http://www.eccj.or.jp/ )、全国地球温暖化防止活動推進センターのサイト( http://www.jccca.org/ )等をご参照ください。

さらにくわしく知りたい人のために
○ スペンサー・R・ワート著, 増田耕一, 熊井ひろ美共訳(2005)温暖化の<発見>とは何か. みすず書房.
○ 環境と開発に関する世界委員会/環境庁訳, 大来佐武郎監修(1987)地球の未来を守るために. 福武書店. 【ブルントラント報告『Our Common Future』の翻訳】

地球環境研究センターニュース2008年6月号(2008年7月7日発行)に掲載]